多摩地区公立小・中学校図書館職員の会ニュース
 
 2003年 盛夏(第13号)
 
            ア ホ 募 集

                 ひつじ書房代表取締役 進化する図書館代表
                               松本 功
                            
 学校図書館が重要であると言うことは自明のことだろう。では、どうしてその当たり前のことが21世紀になってもまったく進展していないのだろうか。10年前と比べて、進化しているといえるだろうか。とても大きな謎であるといってもよいだろう。
 まず、行政が無理解であるということ。これはわかりやすい理由だが、住民にとって本当に必要なものであると実感していれば、運動してでも何でも実現するはずだろう。そうやって公立図書館はできてきたわけだし、それが選挙の公約にもなるはずだ。行政のせいにしないで、シンプルに言えば、住民が本当に学校図書館を必要だと思っていないということになるだろう。
 学校の場合、住民といっても第一義的には親と言うことになる。親が学校の教育にきちんと関わらないということが原因だろう。不十分な教育しか与えられない設備に文句を言ったり、場合によってはバザーをやって資金を集めて、買って寄付したりということがない。学校という仕組みにお任せしきっている。
 さらに、教育というのは教えることだと思っているから、自分で何か調べようとしたときにツールというものに全く想像力が働かない。学校の図書館の設備を見ても、貧相だとすら感じないのである。親自身が、情報の重要さに気がついていない。
 次に、親や住民が必要だと思ったとして、その気持ちを受ける受け皿がないということである。公立図書館の場合は、まだ、正規採用の職員がいるから、動かしやすい。しかし、学校司書の場合は、そのような地位にいない。改善するためにコアになる人がいないことが多い。さらに学校図書館の司書に専門職がいないということ。就職口がないために、人材が集まらないから、問題を組織化できない。つまり、多くの人に問題点をわかりやすく伝えて共感を集めるように説得できなる人がほとんどいないということだ。
 ここまでくれば、もうだめだという感じだが、問題が明らかになっても、それを具体化可能なかたちで行政に訴えることのできる人々とそれを受け止めるその周りの住民と行政のスタッフがいなければ実現しないだろう。
 問題があっても、それを問題と感じることができなければ、問題にならないし、問題だと感じても、それを問題であると表現できる人がいなければ、問題にならないし、問題であると表現できても、それに共感できる人とそれを実現できる流れがなければ、問題解決ができないということである。
 要するにどう転んでも解決するはずがないということになるだろう。このような場合は、今まで考えてこなかった奇策が必要であり、それによって一点突破する必要がある。いわゆるランチェスターの法則(人数や武器が少なければ、接近戦に持ち込むという戦略)というものがあるが、いったい、どこを一点突破するか。
 私は、中高のおける就業支援だと思う。親もリストラになる時代こ、親たちも仕事に就くことに関心が及んでいる。時代の移り変わりが激しい中で、でんな業種が生まれ、どんな仕事が生まれているかを調べられることは重要である。それぞれの職種や仕事によって、必要な知識や情報は変わっている。それらをフォローアプできるのは学校図書館しかないのではないか?アメリカでは学校図書館や公共図書館にジョブサービスがあるのは当然のことである。
 当たり前にやってだめなら、奇策でも何でもやるぺきなのだ。その意味では、学校図書館の司書の世界に、奇策を実行するアホがいなかったというのが、21世紀になっても進化できない理由だろう。

     日野市の「学校図書館事務嘱託員制度」を振り返つて

                   元日野市学校図書館嘱託員 鈴木久美子

 日野市は、都内では一番早く1990年に小中学校図書館こ専任職員(学校図書館事務嘱託員を全校配置して、注目されたところです。「人を置く運動」が各地に広まるきっかけにもなりました。ところが学佼図書館法改正で司書教諭が発令されることになったので、今年の3月で制度を廃止してしまいました。4月からほ兼務の司書教諭と複数の有償ボランティアで賄っています。
 この13年間には、制度上の問題や雇用止めの危機にぶつかる事もたびたびでした。当初から図書嘱託員として関わっていた者として、この制度を振り返ってみたいと思います。

1.制度の経過
1990年5月
 広報で公募してスタート(小学校20校・中学校8校に各1名ずつ配置)週5日10時〜16時(実働5時間)資格は不問
 仕事の説明もなく、それぞれの学校で仕事を開始。秋に初めて全体会が開かれ。
 その席で、臨時職員だから雇用は1年限りと言われ、現職者で話し合い、積み重ねの必要な仕事であると、指導室に要望書を出す。
 →翌年から非常勤嘱託で、「1校2年で異動、2校まで(計4年)」となる。
  90年は試行期間扱いとなる。
1994年−4年目の年。学校図書館の発展を願う市民が「日野市の学佼図書館をもっとよくする会」(以下よくする会と略す)を設立し、仕事内容から1校2年では短すぎると市議会に請願を出す。実践報告『扉をひらいて』発行
 →全国の学校図書館関係者や市民団体からの熱い支援、また要綱の矛盾を指摘する市議の議会質問もあって、設置要綱が改正され、「1校3年で異動、6年まで」となる。
 但し年限は、今までの分を入れて6年まで、とされる。
1996年−6年目の年。有志で『スタッフ・マニュアル』『扉ひらいて2』を作成し関係者に配って、職の専門性を訴える。市教委宛に諸団体から署名・要望書も届くが効なし。
 →日野市職員組合に加入。執行部が先頭に立って「なぜ学校図書館だけ年限規定があるのか」と交渉し、6年の適用は見送られた。
1997年−学校図書館法の改正。これは痛手だった。市は設置要綱の付則に「平成15年3月31日限りで効力を失う」と明記した。制度の継続と充実を求めて、99年と01年に「よくする会」が教育委員会に請願や要望書を出すが、不採択となる。
2001年−財政難を理由に勤務日数が減らされた。制度廃止への布石と読める。おまけに「読みきかせ問題」も起こった。図書嘱託員が読みきかせをすることは指導にあたるからやらせてはいけない、というものだ。「子どもが楽しみにしているのになぜ?」と保護者が動いた結果、黙認の形で再開したが、何とも後味が悪かった。
2002年7月に、ある学校で図書嘱託員が辞めた。従来の設置要綱が生きているにも拘らず、市教委は後任を入れずに、安い謝礼で有償ポランティアを雇った。廃止後に照準をあてた切り崩しである。
 11月「学校図書館あり方検討委員会」の報告書が出た。(注:資料1に所収)
私たち現職者は委員に含まれず、仕事の説明に2名が1回呼ばれただけで、討論には全く加われず、蚊帳の外だつた。10回に亘つて「新たな学校図書館のあり方」を検討した結果があの報告とは…哀しいほどお粗末な内容である。担任や教科を持ちながらの兼務の司書教識とボランティアでは、図書館活動が活性化するとは思えない。これが本当に望ましい姿なのだろうか。この報告書は請願その他に「錦の御旗」となってしまった。12月:請願不採択(24,248筆)
2003年3月31日制度廃止

2.私たちの取リ組み
 あと1年という年をどうするか、皆で話し合った。そして、私たちの仕事を市民にもっと知ってもらおうと、「学校図書館展」の企画が生まれた。7月の日野駅構内ミニギャラリーを皮切りに、児童館の子どもまつり、市役所、再び日野駅、市立百草図書館と、パネル・壁面飾り・本の紹介など、日常活動の一端を紹介する展示を行った。
 一方、日野市職員組合の学校図書館嘱託員部会として、学校教育部長や指導室長などと度々交渉した。制度の存続は子どもたちの事を大切に思っての要求だと何度も話し合いの場を持つたが、「この制度は司書教諭が配置されるまでのつなぎだ」「学校なのだから、教員にもっとやってもらうべきだ」等々、いつも同じ返事のくり返し。あまりの理解の無さに虚しさ・腹立たしさを覚えた。
 今までにも、学校司書の仕事の専門性や多様性、積み重ねが必要な職であることを理解してもらおうと、有志で『スタツフ・マニュアル』や、実践報告の冊子『わたし、本が好きになった』と『扉ひらいて1・2』(こちらは学校図書館問題研究会で発行)を作り、その都度、市長・教育長・教育委員会・市議・学校・市立図書館などに配り、仕事の説明もしてきた。今までどれだけエネルギーを費やしたことか。でもとうとう、行政側には理解者は見つからなかった。市立図書館の支援も得られなかった。

3.市政腔カロ(有讐ボランティア)に切り書わって…
 27校で120人?いるという図書の市政協カ員。1校1名では雇用になってしまうとの理由で、最低でも1校2人、多いところは12人位が協力員として関わっているらしい。週1日・1学期間だけで交替という学校もある。少しでも実態をつかもうと「よくする会」が6月に交流会を開いた。
<市政協カ員の声>
・週1日では本のことを聞かれてもわからない。
・4人で毎日交替なので連絡はノートで。
・お互いの仕事に統一性をもたせたいが、相談する時間・場がない。
・図書だよりを協カ員の立場で出すかどうかで学校側の話し合いが続き、決まるまで2ヶ月閉館していた。生徒からはどうして開かないのかと聞かれ困った。
・読み聞かせは途中からストップがかかる。
・当初は我が子のいる学校でと思って応募したが、今はそれがよくないと思っている。
<教員の声>
・今までは授業の資料も集めてもらえて大変助かっていた、今困っている。
・各校ばらぱら。学校任せになっている。市教委は墓本的な仕事内容は、全体に説明すべきだ。
・ボランティアの希望者が15〜6人あり、学佼は保護者を採用した。日替わりで仕事を伝えるにも困難毎日同じことを言わなければならない。
*このほかにも、「3時で掃ってしまうので、放課後は閉まっていて使えない」など、子どもたちの声も聞こえている。「誰のための図書館か」の視点が完全に抜け落ちている。こんな事で子どもたちの豊かな学びが保証されるのだろうか。リクエスやレファレンスは誰がやるの?図書館を心の安らぎの場にしていた子は、次々人が替わる図書館でどうなるのだろう…プライバシーは?不安ぱかりが募る。
 嘱託員制度の導入で、貸出が飛躍的に増え、司書が本を紹介することで、手に取られにくかった噛みごたえのある本も読まれるようになってきた。また授業と連携し資料提供することで、学びの質が高まり、小学生でも「わからないことは図書館へ」とごく自然にやってくる。こういう数々のプラス面は棚上げにして、「この制度があるから教員がやるべき事を怠った」「読みきかせは指導にあたる」などマイナス面ばかりを追求している。市教委は学校図書館のビジョンを何も示さなかった。
 暗い話題の中で、司書と本について話をし、本の魅カを知った子どもたちの中から、司書希望者が生まれていることは、大きな成果だ。なお4月からの私たちの進路は、他市などで学校司書になった人が6名、日野市の他の職揚で働いている人が11名、市政協カ員が数名などと分散した。
[資料]
1.学佼図書館の灯を消さないで!〜日野市の学校図書館職員制度の制定を求める請願(資料集)500円
2.続・日野市の学狡図書館の灯を消さないで!〜請願はどのように議論されたのか〜(議事録)700円
 連絡先:「日野市の学校図書館をもっとよくする会」事務局 加藤       042-592-2019

集会情報

くにたち市の学校図書館を考える会
子どもたちの“読みたい”にこたえる学校図書館
 講師:広瀬恒子氏(親子読書・地域文庫全国連絡会代表 日本子どもの本研究会事務局)
 日時:8月30日(土) 2時〜4時
 場所:国立市公民館
     東京都国立市1-15
     JR国立駅から徒歩7分
     (電話::042-572-5141)
 参加費::500円
 問い合わせ:清水きぬえ
 電話&ファックス:042-325−5165

ひつじ書房&松本功
ひつじ書房紹介
 対話とコミュニケーションを考え、学術研究と市民知をつなぐ出版社
 http://www.hituzi.co.jp
 文京区小石川5−21−5ψ
 電話:03-5684-6871 ファックス:03-5684-6872
松本功紹介
 『税金をつかう図書館からつくる図書館へ』松本功 ひつじ書房 ¥1,000
 ビジネス支援図書館の副会長、JCAFE(市民コンピュータコミュニケーション研究会)理事、日本 書籍出版協会出版権著作権委員会幹事など多才で、多方面に活躍。
ひつじ書房出版書紹介
 『市民の日本語』 加藤哲夫 ¥950
 『営業のビタミン』 和田裕美 ¥600
 「ひつじサロン」紹介
 ひつじ書房事務所にて、月例会をしている。会費は1回約\2,500

美術展
 13号のイラストは東野雅子さんの作品です。東野さんの展覧会があります。
 国立のグループ展「じゃらんじゃらん」(JR国立駅から旭通りを徒歩10分)
 8月1日から9月10日まで。(定休日 木曜日) 電話042-577-3908

発行人:川真田恭子  メール:Kykwmt@aol.com 

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