多摩地区公立小・中学校図書館職員の会ニュース
 
 2005年 夏(第17号)
 
                                            赤木 かん子
 5年前から学校図書館の改装を始めた。
 その経験その他は今回の話とは直接関係がないのでここでは略す。今日の話しはその結果、私は子どもがいない人間には入ることがない各地の学校にひんぱんにいき、ある程度のおおきさのある学校では百科事典の新しいもの……ポプラディア(ポプラ社の作ったエンサイクロペディア……ですね)が必ずといっていいほど入っているのに、あけるとなかからハガキが落ちる……つまり一回もあけてない!ということを発見した、ということでございます。
 百科事典をあけてない! 使ってない!
 いったいこれはどうしたことだ! こんなにも“調べ学習”“調べ学習”といっているのに!
 ということを追求し始めて、私はようやく、こどもたちは百科事典の使いかたを教えられていない(たぷん指導要綱に載っていないから)から使えない……そうした先生がたも使ってない、使いかたを知らない、ということを発見した。
 日本はここ三十年、こども用の百科事典は作られていなかった。だからその時代に大きくなった今のセンセイがたのほとんどは百科事典を使ってこなかった……だけではなく、論文の書きかたを知らない、ということを発見した。
 論文の書きかた……というものはある。
 およそどんなことにだって、ノウハウはあるのだ。もちろんオリジナリティは教えられることではないが、丹念にこの順序通り辛抱強くやっていけぱ論文は書ける。という手順はあるもので、普通大学では予備ゼミといってそのやりかたを教える……従って教職の人はそれを知っているハズだとばかり私は思い込んでいたのだが、教職課程ではそういうことはしない……といわれてガク然とした。卒論はどうやって書いたの?というと、なんとなく……というわけで、文学部と教育学部は(教育学部が!でっせ?)ちゃんとやってなかったらしい、というのがだんだんわかってきた。
 経営・経済学部と社会学部はやっているようだが、そこから教師になる人は、ほとんど中・高の社会の教師になってしまうので、ということは小学校には論文の書きかたを知っている人はいない????らしいということがわかってきた。
 そりゃあ“調べ学習”できないはずだよ!
 自分が書きかた知らない人が、人の論文指導はできませんわな。
 というわけで、大急ぎで小学生用の論文の書きかた……のカリキュラムを作り始めた。 
 これは“図書館学”で、本来ならば、学校図書館の司書、が教えるべきことである。
 考えたこと試してみて(最初の頃つきあってくれた人たち、まだうまくなくてごめんね!きみたちのおかげでかんこさんはやりかたを修正し、うまくなったですよ。ありがとう!)私は担任の教師でもなんでもなくて(しがないボランティアである)そうたくさん時間はとれないので、今圧縮して二コマもらい、最初の45分で“本はどうやってできたか”と“目次と索引ワーク”……次の45分で“百科事典のつかいかた”“調べたくないのにしらべなきゃいかないときに調べなきゃいけないことを決められる簡単なやりかたを話している。
 そうすると、使いかたさえ話せばこどもたち百科事典を使うのだ!
 この授業をすると、たいていの学校では休み時間のたぴに誰かが読んでいて半年もするとガタガタになるのだ。
 それも、ふだん、本を読まない、といって怒られているよう子どもたちが、だ。
 というのは百科事典はリアル系で、本当に起きたことが書いてあるタイプの本である。
 が、今の日本の特に四十代以上にとって、本を読むというのはイコール小説を読む、ということで、物語を読むのが嫌いな子たちは“本嫌い”だと思われてしまうのだが、世の中、空想系が好きな人よリリアル系の好きな人のほうが圧倒的に数は多い(と私は思う)。
 これは単純に好みの問題なので、物語が好きな人で、同時に「経営論」とか「法廷判例学」とかも読む、という人はめったにいないと思う。
 「ITと呼ばれた子」ば今の中・高生の大ベストセラーだが、あれもリアル系である。
 リアル系の人にとって、百科事典はエンターティメントなのだ。
 そうして、百科事典は厚いから高学年、と思っている大人が多いのに初めて気づいてこれもガク然としたのだが(公共図書館で働いていれぱそんなことは考えつかないのですよ。だって毎日こどもはそのテの本を借りていく)“あいうえお”順さえわかるようになれば、つまり百科事典は一年生の二学期からもう使えるものなのだ。
 そういうわけで私は今この授業を各地でしてまわっている。
 調べ学習を始める前の予備ゼミ……は司書の仕事で、ひととおりやるには(まだ全部作ってないけど)16コマくらい必要だと思う。
 大学生だって……一年やるのだから、小学には小学生用のやりかたでそのくらいあってもしかるぺきだと思う。
 システムが変われば、たとえばコンピュータの扱いかたそのものは変わるかもしれない。でも考えかたそのものはおそらく不変である。それを体にのみこんで欲しいのだ。そうすれぱ、これは一度覚えれば一生使えるテクニックなのだから。

  学校司書2年目
                    
西東京市立保谷二小・東伏見小 学校図書館専門員
                                                 村上太郎

 本誌に原稿を寄せたのが1年半ほど前。中学校の杜会科教師を退職し、司書資格を取得し…という時期だった。厳しい採用状況の中、数校の不採用が続いた後、幸いにも2004年4月より西東京市に採用され、学校図書館に勤務する機会を得ることができた。
 ご承知のように西東京市は2001年1月、保谷市と田無市が合併してできた自治体である。現在、西東京市では、市民嘱託員「学校図書館専門員」として市内小・中学校2校に1名・計14名が配置されている。勤務時間は1日6時間。休憩が1時間あるので、学校には7時間はいることになる。勤務の形態は隔週の勤務をとる学校や2週を2日と3日で分ける勤務をとる学校があり、勤務する2つの学校間で調整されている。

 私は2校に隔週で勤務している。ともに17学級の比較的大きな学校である。昨年4月に勤務を始めてから、ずっと欠かさずしていることに、職員向け図書室だよりの発行(月初め)、がある。「本」にどう触れさせていくか、ということよりもむしろ「図書室」「司書」にどう関わってもらうか、といった関わり方を理解してほしいという考えが強くあったからである。自分の教員時代を振り返ると、学校司書が勤務していてもその有用性が十分わかっていなかった、使いこなせなかった、もっといろいろと頼めばよかった、という感がある。子どもたちが上手に資料と向き合ったり、図書室を利用できるようにするためには、まず先生方が上手に資料と向き合ったり、図書室や司書を利用し便利さを実感してもらわねばならない。そのためには、かつての私のような教員でなく図書室や司書を活用できる教員になってもらうことが重要になるというわけだ。(ちょっと偉そう…)自分も教員時代そうだったが、先生方は知的好奇心がとても旺盛で、しかも自分で問題解決や課題解決することが好きである。だから時間があれば、自分で調べ、自分が納得する資料を選ぶことはおそらく得意なはずである。しかし、現在さまざまな仕事を抱え、授業の用意さえ勤務時間だけではとても終わらないような状況のなかではそれも欲求不満のストレスがたまるだけになっているかもしれない。教員が本来なら自分でしたい、と思っているであろう仕事を専門職の司書が繋いであげること、私が学校司書になってしてあげたいと思った一番の仕事である。
 職員向け図書室だよりの終わりには、前月に先生方がどのような利用をしてくれたかを記すことにしている。読み聞かせをしたクラスが何クラス、利用指導をしたクラスが何クラス、司書に来たリクエスト、レファレンスはどんなものがあったか、等である。そしてどんどん使ってほしい旨を記している。
 昨年4月は、「プリントはメールボックスに入れればいいですよ」と言われ、各先生方のメールボックスに入れた。だが、これはこの時限りにした。そう、見ない先生はほとんど見ないのである。そこで5月からは、職員室の机上に1枚ずつ配ることにした。とりあえず、職員向けの図書室だよりが出ていることを知ってもらわねば、というのが実感であった。隔週勤務のハンデを感じることは多々あり、毎日いることができればなあと思うことがあるが、逆に2校に勤務していることで職員向け図書室だよりにリクエストやレファレンス内容を知らせる事ができている。
 先生方とのコミュニケーションもしだいにとれるようになり、2年目に入って、使ってもらうことも多くなってきた。私の場合、勤務時間は9時から4時なので、出勤すると朝の打ち合わせは終わり職員室は空、4時前に職員室に戻ってもあまり先生方には出会わないというパターンも多い。もちろん、こちらから用があるときは給食時間などをねらっていくが、なかなか声をかけてもらう状況に出くわさない。
 小学校なので、「図書の時間」があり、図書室の割り当てが週1時間ずつあるが、授業時数の制約もあり、毎時間図書室に来るとは限らない。また来室するかどうかもその時間が終わってみないとわからないという現実もある。2校とも利用計画が十分整っていないこともあり、ただ図書室に来て読書、というパターンが多かったようである。しかも隔週勤務なので、いつでも司書がいて要求に応えられるわけではない…。しかしめげずに、来室したときに笑顔で迎え、いつでも指導できるような準備は欠かさず毎時間行っている。2年目に入り、小学校の様子もわかり、来室時にはこちらから積極的に時間をもらっていいか尋ねて、読み聞かせや利用指導をするようにしている。学校司書がいなかった学校から異動してきた先生方の方がすんなり、「便利」を実感してくれる事が多い。
 1年目から感じたことは、図書室や司書を積極的に利用する担任の児童は、やはり図書室や司書の利用もうまく、読み聞かせをしても本の愉しみ方がわかっているということである。つたない読み聞かせでも、本の世界に入り込み、大いに愉しむ姿は学年に関係なく、機会に比例しているように思う。やはり鍵は先生が握っているといえそうだ。

 紙面も終わりが近づいたが、もう一つ心がけていることは、いかにして明るい雰囲気の図書室にし、読書嫌いの子にも居心地のよい場、「子どもの居場所」をつくる、ということである。入口にはイーゼルを据え、ドアには季節のペーパーフラワーを掲示し、なるべく本のフェイスアウトを増やし、メッセージボードを設置し(小学生はあまり気づかないことが多いが)、「ミッケ」(小学館)や「どこどこ?セブン」(自由国民社)を常設し、書架の本は背が前面に出るようにし整える、というようなことをしている。細かいようだが、きれいに背がそろって整理しているだけで、書架は古くともずいぶん雰囲気は変わってくる。そして読書があまり好きでない子たちが今まで手を伸ぱさなかった書架に手を伸ぱすのをじっと待っている。(もちろんいろいろな形で働きかけはしているが…)

 2年目に入ったものの「司書」と呼ばれるにふさわしい力は当然まだまだ不足している。そう簡単に教員時代に読めなかった分の本をたくさんは読むことはできない。(本当に教員時代は本を読むゆとりもなかった。ましてや児童図書は…)しかし教員時代の経験を活かしながら頼られる「学校司書」になるべく努カしていきたいと考えている。周囲の先輩司書の方にも支えていただいている。言うまでもないが、先生方からだけでなく、子どもたちの期待に応えられるように。

☆情報☆

★ポプラディア調べ学習電話相談室 室長 赤木かん子
 受付時間: 月、水、金曜日(祝日は除く) 15:00〜18:00
 電話 03−3357−2295
★『本を通して世界と出会う〜中高生からの読書コミュニティづくり〜』
  2005年 川真田恭子(分担執筆) \1900+税 北大路書房
★「子どもの読書環境整備のためのチェック項目」日本図書館協会 \300
発行人:川真田恭子  メール:Kykwmt@aol.com                                            
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