多摩地区公立小・中学校図書館職員の会ニュース
 
 2002年 冬(第9号)
 
        日本の読書環境の不備を示したOECD調査


                              日本図書館協会
                                松岡 要

 政府が8月に閣議決定した「子ども読書活動推進基本計画」では、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」結果を引用して、日本の子どもたちの読書が他の国に比較して問題があることを冒頭で紹介している。「趣味として読書をしない」「どうしても読まなければならないときしか、本は読まない」と答えた子どもたちがOECD平均に比べて極端に高い実状を数字で示し、この計画の必要性を意義付けている。
 この調査は、「学校で学習した教科内容の理解度や定着度をみるというよりも、子どもたちが将来社会に参加したり、生活していく力をどの程度身に付けているか」をみる国際比較調査で、世界32か国26万5千人の15歳児、日本は高等学校全日制学科の1年生5300人が参加した。国立教育政策研究所は「わが国にとって重要と思われる結果について、わが国の視点からまとめた」報告を出した(『生きるための知識と技能−OECD生徒の学習到達度調査2000年調査国際結果報告書』ぎょうせい刊)が、このなかで読書や図書館について18の設問の結果を公表している。
 「あなたは、毎日、趣味としての読書をどのくらいしますか」との設問に対して、「しない」と答えた子どもは55%で、OECD平均31.7%と23ポイント以上の差がある。「どうしても読まなければならないときしか、本は読まない」について、「どちらかといえぱあてまる」「とてもよくあてはまる」と答えた子どもの計は46.6%で、OECD平均35.2%と11ポイント以上の差がある。いずれもサミットG7のなかではトップである。
 自分から読みたいと思って読むことはどのくらいあるか」という設問に「週に数回」との選択肢に過半数が答えたものは、「雑誌」51.6%(OECD平32.9%)、「コミック」58.8%(同14.1%)である。「まったくか、ほとんどない」と答えたものに「ノンフィクション(伝記、ルポルタージュなど)」52.7%(同32.8%)、「フィクンヨン(小説、物語など)」30%(同25.8%)がある。いずれもG7のなかでは最も高い。これらのデータは、日本の子どもたちの読書に偏りがあることを示している。
 家庭でどのくらい本を所蔵しているかについての設問に対して、「まったくない」「50冊未満」と答えた子どもの計は34.9%(OECD平均の28.7%)。「501冊以上」と答えた子どもは7.8%(同11.6%)である。日本の家庭には、他の国に比べて本が十分備えられていないことを示すデータである。これもG7各国に比較して日本は最も貧しい。イギリス人は本は借りて持つことはしない、日本人は本を買って所蔵する、という国民性があるとの俗説があるが、このデータを見るかぎり違う。
 このOECDのデータは、日本の子どもたちの読書環境は極めて貧しいことの結果を示している。G7における人口あたりの公共図書館数は、日本は4万7千人に1館であるが、G7では1万4千人に1館であり、3倍もの差がある。学校図書館には専任の専門職員が配置されているところは極めて稀である。この実態を変えることが必要である。各地で策定の準傭が始められている子どもの読書推進計画はこのような実状を変える読書環境を整備する内容をもつべきであり、子どもたちに読書を督励すべきものではないと思う。子どもたちが将来の杜会参加、生活力を身に付けるために必要な基盤整備である。



        
多摩地区 学校図書館職員の話 その7
                 
                    国立市立国立第三中学校 川真田恭子

国立市(くにたちし)

国立市は小学校8校・中学校3校に学校図書館職員が配置され、全校11校配置である。学校図書館職員の勤務は月曜日から金曜目までの週5日、1日5時間である。年2回、教育委員会の指導課で、公共図書館員の方々と、研修が行なわれている。国立市図書館協議会に学校図書館職員が委嘱されている。公立図書館からの児童サービス、団体貸出しサービス、リサイクル本の提供を受けている。

学校図書館

 本校は、南武線の谷保駅の南に位置し、谷保天満宮や田んぼがあり、四季おりおりの季節を感じる自然にめぐまれた環境にある。図書室は校舎の3階にあり、1.5教室分のスペースである。読書に、調べ学習に学校全体でよく活用されている図書室である。学校図書館へ勤務して6年目であるが、「図書館は進化する有機体である」を実感して
いる。総合的な学習が始まり、教科書がなく学びの主体が生徒である新しい学びが始まった。この学びに学校図書館が求められている。学校図書館を有効利用することは、@多様な知識を身につける(知識)、A自分の頭で考える(思慮)、B調ぺる技術(スキル)を体得して、課題解決能カをつけることである。課題解決の判断材料がある図書館を生活の中に入れることは、生涯の生きる力になる。

 最先端文明のニュートリノの資料から、現代でも感動する100年前の夏目漱石の『吾輩は猫である』の文化資料まで学校図書館にある。学校図書館は、宝の山である。人類の遺産がある学校図書館で、生徒のそうぞう(想像・創造)は、深く広くひろがる。

 テーマ排架は学校教育の中で役に立つ。その中で進路のテーマの棚は2段ある。この進路資料は、職業調べなどで使われている。この資料で、生徒が将来の進路のイメージを持ってくれたらと願っている。

 インターネット時代とは、だれでもが、知識を簡単に得ることができる時代である。資料から必要な情報を得ていく方法を知ることは、21世紀に生きる子どもたちに重要である。印刷資料から電子資料まで、メディアも多様である。複数の資料から得た情報を比較して検討していく力が大切である。
本を手渡す方法には、展示・ブックトーク・読書案内・アニマシオン・読み聞かせなど様々である。学校生活の中にいる学校図書館職員の実践がレファレンスを始めとして、本と人とを繋げることに奉仕している。

連携

 教師はサブジェクトの専門家、学校司書はメディアの専門家である。(竹内*・日本図書館協会理事長)教師と学校図書館職員の連携を、学校教育の中で組織づくることが重要である。そして、学校図書館を@イキイキとさせるために、A一人一人に適切な資料提供をするために、学校図書館と公立図書館の連携が大切である。くにたち市立
図書館は、学校教育を支援する学校図書館に、大変理解があり、多大なご協力をいただいている。学校図書館を支援するという公立図書館の方針に、学校図書館が進化できる。21世紀の学校教育は、学校図書館を核にして、教師との連携・公立図書館との連携が重要である。

図書室の風景

図書室って楽しいいね!


 「見て、見て、この本凹でしょう。さかさにすると、凸に見えるよ。」と、『えほん視覚ミステリー』を囲んで、生徒の輪ができる。
 「ねえ、吉本ばななと江國香織の本、もっと入れてよ。面白いよ。」と、話し掛けてくる生徒。
 『創竜伝』を見ながら、「この本、面白いぜ。」と、友達に話している生徒。
 男子生徒に人気の『ギネスブヅク』や、地図の本。
 読ませたい本より読みたい本がある図書室は、生徒も本もイキイキしている。

「わかった!」「やったあ!」の声が聞こえる図書室

『記号の事典』を見て、「やったあ!ほら、誘拐じゃないでしょう。」と、友達に話す二人組み。
 美術授業の図書室利用で、生徒が「星座の本ある?」と言われ、天文年鑑や百科事典を渡し、索引を使って一緒に調ぺると、「こういうんじやなくて、さそり座とかの絵みたいになっているのがいいの。」と言われた。『まんがギリシア神話』の巻末に載っいたのを思い出し手渡すと、「これだーー。よかったあ。」の声。
 知りたい時にすぐにわかること、知的好奇心が満たされる。



       日野市の学校図書館職員について


 朝日新聞の2002年11月27日(火)と読売新聞11月26日(月)に、日野市の学校図書館嘱託員廃止について、掲載されました。全文は載せられませんので、抜粋を下記に記します。詳しくは、図書館などで、読んでください。

朝日新聞

学校図書館法改正で兼任司書教諭・日野の小中学校 消える専任嘱託
市の財政難しわ寄せ・「ケア手薄に』と現場懸念日野市の市立小中学校27校すぺてに専任職員として配置されている「学校図書館事務嘱託員」を巡り議論が続いている。市は学校図書館法の改正に伴い、今年度末に嘱託員制度を廃止し、かわって有償のボランティアを置く構想などを検討している。市の厳しい財政事情が背景にあるのだが、現場からは「子どものために専任職員が必要」と訴える声が聞かれる。
ポランティア代替は逆行
日本図書館協会の松岡要総務部長の話
 司書教諭発令に伴い、自治体が財政難から職員を滅らそうと、これまでの制度を廃止する動きは全国的に少なくない。しかし、発令されても兼務では状況は変わらないし、「余計な仕事が増える」と教諭が嫌がる傾向もある。国会の付帯決議や、8月に閣議決定された「子どもの読書推進に関する基本計画では学校司書の役割を強調し、むしろ配置を促していることに照らすと、職員制度を廃止してボランティアで代替するのは問題だ。

読売新聞

「専任職員配置続けて」日野の市民グループ 学校図書館の嘱託員廃止で
図書館嘱託員の勤務日数は昨年以降、週五日から四日に削減されており、背景には市の財政上の間題もあるとみられる。同会の加藤暉子事務局長(62)は「子どもの学びの場を保障するには專任職員を」と反発している。
 都内では現在、四区と九市で学校図書館に人を置く制度があるが、「先駆的な役割を担った日野市の動きは全国にも影響する」と心配する。(文責:川真田)

資料紹介

『学校図書館のカウンターから』
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