2005年11月2日
日野市長
馬場弘融様
                                             ライブラリー・フレンズ日野
                                            (旧日野の図書館を考える会)
                                              代表 小林 卓
「第3次日野市行財政改革大綱中間報告(案)」についての意見
1.私たちライブラリー・フレンズ日野(旧日野の図書館を考える会)は、「第3次日野市行財政改革大綱中間報告(案)」の「人事給与部会中間報告(案)」ならびに「行財政部会中間報告(案)」に記されている、「中央図書館カウンター業務及び分館を単位として民間委託化を実施する」について、別紙に述べる理由により、反対いたします。

2.また、「財政部会中間報告(案)」に記されている「図書サービスの有料化」に強く反対します。現在、宅配サービスを利用しているのは、すべてなんらかの意味で図書館の来館利用に困難をもつ方々であり、このようなサービスに有料制を導入している公立図書館は全国にありません。

3.「行財政部会中間報告(案)」に記されている「社会的弱者(情報弱者を含む)への取組み」で、「各地域の拠点(図書館等)にインターネット端末を配置、ICT講習会の充実、紙ベースでの情報提供を実施する」とありますが、これでは視覚障害者等活字を読むことに障害のある、最も情報から阻害されている市民への取り組みが具体的に示されていません。「点訳、音訳による情報提供の充実」も加えてください。

4.「行財政部会中間報告(案)」に記されている「社会的弱者(情報弱者を含む)への取組み」の中の「図書館で高齢者サービスを実施する(宅配サービス等)」、「病院図書館サービスの実施検討(図書コーナー等)」、「障害者サービスの拡大(視覚障害者向けサービス等)を検討する」については、これを支持し、その具現化を求めます。

5.また、「行財政部会中間報告(案)」に記されている「図書館システムの他市とのパッケージ利用を検討する(書誌データベースの他市との共同開発・運用を図る、他市との資料の分担保存・共同保存庫を設置する)」を意義あるものと評価し、その研究・促進を求めます。
別紙
私たちは日野市立図書館の業務委託に反対します
1.なぜ民間委託ではいけないと思うのか
読売新聞の2005年9月22日朝刊の記事で、「教育ルネサンス 生かす図書館の力」という連載で、全国の委託・指定管理者制度・PFIによる図書館運営が紹介され、そこで、桑名教育委員会生涯学習課長の言葉として、「サービスがよければ、利用者にとっては実施主体は関係ない」という言葉が引かれています。
私たちは市民にとっての図書館を考える立場から、この言葉自体はそのとおりだと考えます(もっとも利用者も図書館員も安心して図書館に関われるのが理想ということを考えれば、利用者さえよければよいとは言えませんが)。
しかし、そこで私たちが問いたいのは「そのサービスの質と継続性の保障はどのようになっているのか」ということです。
2.「民間委託=経費の節減」は必ず人件費の節減につながる
行政が民間委託をすすめる主たる理由は「経費節減」です。これには異論はないでしょう。そこで、サービス内容を同じにしたまま経費を節減するとなれば、そこで削るのは人件費以外に考えられません。なぜなら図書館サービスとは、けっして「お金が儲かる」サービスではないからです。たとえば、民間委託の実績では、職員の給料は普通時給800円ほど、しかも「社会保険料を会社が払わなくともすむように、多くのアルバイトを使って短時間勤務させる。月収は9万円」(東京の図書館をもっとよくする会のサイト:http://motto-library.cocolog-nifty.com/main/2005/02/22.htmlより引用)といわれています。
 これでは、継続的に同じ図書館に勤めていく人は、ほとんどいないということになるでしょう。
 「図書館員が一人前になるには10年かかる」といわれています。市民のニーズを深く知り、レファレンス等の技術を磨いていくには、経験がなにより重要です。また、長期的な就業の展望がない以上、専門職には不可欠な研修に参加する意欲も余裕もなくなるでしょう。
 図書館サービスの要はなによりも「人」です。この「人」への待遇をおろそかにして、サービスの質と継続性を維持するというのは不可能に近いと考えます。
3.市民と図書館の接点はカウンターです
「第3次日野市行財政改革大綱4部会中間報告書(案)」では、「図書館運営業務の見直し:中央図書館カウンター業務及び分館を単位として民間委託化を実施する」としています。まずカウンターについて述べますと、カウンターこそ市民と図書館の接点です。図書館サービスのよしあしを市民が実感するのも、日頃のサービスについて思っていることを口にするのもカウンターにおいてです。
 このカウンターの重視については、日野市立図書館の初代館長の前川恒雄氏が、繰り返し説いています(前川恒雄『われらの図書館』筑摩書房、1987等をご参照下さい)。カウンターとその他の業務を分離し、ことなった管理体制におくということは、市民とのパイプを自ら断ってしまうことといっていいと思います。
 市民の声を直接聞いていない、「カウンターの後ろ」の人々だけで、これからの図書館サービスを考えていくということ、実際に日常的に市民を見ることからサービスのさらなる発展を考えるのではなく、分断された「管理者」だけが図書館サービスのあり方を決めていくということ、その先に「市民の図書館」はあるでしょうか。
4.図書館とは「システム」です
 次に分館についてですが、分館もまた市民と接する最前線です。日野市は浅川をはさんで、南北の交通の便がよくなく、モノレールやミニバスによって、いくらか改善されたとはいえ、大多数の市民にとって、日常的に利用する図書館とは中央館ではなく分館です。
 そして、これらの中央館、分館をバラバラの建物ではなく、「システム」として考えるのが今日の図書館サービスのとらえかたです。これらの分館網が有機的にむすばれてこそ、はじめて市内全域の市民への公平なサービスが可能となる前提ができるのです。このことは、二代目館長の砂川雄一氏が強調しています(砂川雄一「市町村における図書館システムを改めて考える」『いま、市民の図書館は何をすべきか』出版ニュース社、2001等をご参照下さい)。
 これらのことから、カウンター業務、分館の民間委託は、本来有機的である図書館サービスをバラバラにするものであり、またそこに市が責任をもたないということは、市民との接点、市民の声の軽視と考えます。
5.「公」と「民」では目的が違います
 私たちは「公」と「民」では、そもそもの目的が違うと考えます。究極的には「公」の目的は、憲法にいう「健康で文化的」な生活を公平に保障することであり、「民」の目的は利益をあげることです。
 そして、「民」にできて、「公」にできないものは基本的にないと考えます。一点だけ、明らかに「民」にできて「公」にできないこと、それは「弱者の切り捨て」です。
 すでに、「第3次日野市行財政改革大綱4部会中間報告書(案)」では、「図書サービスの有料化:宅配サービスについて、対象者が一部偏っていることはないか、事業本来の趣旨から考え必要なサービスか検討する。また、宅配サービスの実施にあたり、サービスに応じた受益者負担についても検討する」という案を載せています。現在、宅配サービスを利用しているのは、すべてが図書館利用になんらかの困難をもった人です。こうした方々への宅配サービスに有料制を実施している図書館は全国になく、この「案」は必ず撤廃しなければならないと考えますが、この「案」にも弱者切り捨ての方向を見て取ることができるでしょう。この「案」は「公」の部分で弱者切り捨てを行おうとする論外のものですが、部分的にでも民間委託がすすめば、そもそも目的が違う「公」と「民」では軋轢がおこるでしょう。委託がすすめば、切り替え直後には弱者切り捨てが行われなくても、長期的に「経営的に効率が悪い部門」が切り捨てられていくのは、民営化されたJRなどをみても明らかです。その時、被害をうけるのは、障害者はじめとする図書館利用に困難がある人であり、私たち市民なのです。
6.日野の図書館は、わたしたちの誇りであり、財産です
 日野の図書館は1965年に1台の移動図書館からそのサービスを出発させ、全国の現在の「市民の図書館」のさきがけとなりました。日野は「図書館のまち」と呼ばれるようになり、これに続く多くの自治体の図書館は日野を参考にし、「日野詣で」といわれる訪問が、全国にモデルを提供したのです。
 その後も、貸出へのコンピュータ導入にあたっては、いちはやく「コンピュータ導入の原則」を打ち出し、市民のプライバシーを守る姿勢を鮮明にし、障害者サービスでも先駆的な取り組みを行ってきました。日野はまさに日本の「公共図書館のふるさと」です。
 日野の図書館の活動は常に全国の図書館の模範とされてきたのです。日野の図書館は私たちが全国に誇りうるものであり、そして市民のかけがえのない財産です。
 財産とは、建物のことをいうのではありません。ひとつひとつの日常業務の積み重ねによって築き上げられた今日のサービスをいうのであり、経験が蓄積されてきた職員と利用者の共同の「人」の財産なのです。
 いま、記念すべきはずの日野市立図書館出発40年の年に、この私たちの宝が上記に述べた根拠により、なし崩しに放棄されようとしています。
 私たちは、この長年にわたって築き上げてきた財産を現在の日野市民のためにも、そして未来の市民のためにも守る必要があると考えます。
(ライブラリー・フレンズ日野 代表 小林卓)
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