市 民 と 図 書 館
−町田市立図書館の実践−
 
2002年4月21日(日)
日野市生活・保健センター講座室
 
 
手嶋孝典氏のプロフィール
 
略歴
 
 1949年生まれ
 1972年町田市役所入職
 1980年教育委員会図書館に異動、現在に至る
 (その間1992年4月から1995年3月まで市長部局に出向)
 『ず・ぼん』編集委員。
 
主な論文
 
・「調布市立図書館の財団委託をめぐって」(小特集「どうなる!?調布の財団委託)   『ず・ぼん』no.1 pp.107−108 新泉社 1994年7月
・「日本図書館協会における『図書館の自由』の二重性」ずぼん図書館とメディアの本』 no.3 pp.110 ポット出版 1996年
・「浪江先生の人柄」『月刊社会教育』1999年5月号
・「元私立鶴川図書館を訪ねる(浪江虔を偲んで)」ずぼん図書館とメディアの本』 no.6 pp.130-135 ポット出版 1999年12月
・「浪江先生を偲んで」『図書館文化史研究』no.16 pp.15-16 日外アソシエーツ(発売 紀伊國屋書店) 1999年
・「町田市立図書館が嘱託員制度を導入するまで」ずぼん図書館とメディアの本』 no.6 pp.142-149 ポット出版 1999年12月
・「図書館は『無料貸本屋』か」をめぐって(小特集「図書館は出版文化をどう支えるか」) 『図書館雑誌』2000年6月号 p.64
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
T.町田市立図書館のサービス理念と目標及びサービスについて
 1.町田市立図書館のサービス理念
   @ 市民生活とまちづくりに役立つ図書館
   A 市民と共に成長する図書館
   B 市民に信頼され支持される図書館
 
2.町田市立図書館の目標
   @ 市民生活をより深く、豊かなものにすること。
   A 市民が現代社会を生き抜く力を獲得するための手助けをすること。
   B 市民が積極的に市政に参画できるようにすること。
   C 生涯学習の拠点にふさわしいサービスを確立し、市民の信頼を獲得すること。
   D 子どもたちが豊かな心と生きる力を育むことができるようにすること。
   E 高齢社会にふさわしいサービスを展開し、老後の生活を豊かなものにすること。
   F 社会の中核を担う勤労者に対するサービスに力を入れ、町田市の活性化を図る
    こと。
   G 図書館の利用が困難な人々へのサービスを重視し、あらゆる人々が図書館を利
    用できるようにすること。
   H 利用者との対話を重視し、新たな市民文化の創造拠点となること。
   I 市議会議員、市職員に対し、政策立案の支援を積極的に行い、市政を活性化す
    ることに役立つこと。
 
 3.町田市立図書館のサービス
   @ 資料の提供(収集・保存、貸出し、予約)
   A 情報の提供(レファレンス、読書案内)
   B 町田市に関する資料・情報の提供
   C 施設・機器の提供
   D 集会事業
   E 対外サービス(学校、地域団体等)
   F 図書館利用が困難な人々へのサービス
    ※ より具体的かつ実践的な「町田市立図書館サービス計画」を別途策定する。
 
 4.中央図書館の機能
   @ 地域図書館としての機能
   A 地域図書館を越えるサービスを提供する機能
   B 地域図書館との連絡調整機能
   C 町田市立図書館以外の図書館との連絡協力機能
 
 5.地域図書館の機能
   @ ある程度のレファレンスは徹底して行える体制
   A 身近な図書館であるからこそ得られる雰囲気
   B 集会活動、行事の実施と施設の提供
   C 地域図書館で対応しうるハンディキャップサービス
   D 開架フロアーの閲覧席等の拡充
   E 学校図書館との連携を進めるための体制
   F AV(オーディオ・ビジュアル)資料の貸出し
   G 分担保存も考慮に入れた書庫
 
U.町田市立図書館の研修制度について
 1.第2木曜日(休館日)の午前中に行っている研修
  ・ 対象は、事務系職員と嘱託員、臨時職員(短期雇用を除く)。
  ・ 職場経験が1年未満の職員(嘱託員を含む)及び臨時職員は、新人研修を受講。
  ・ 職場経験1年以上、2年未満の職員は、フォロー研修を受講。
  ・ 職場経験2年以上の職員は、コース別研修を受講する。この場合は、受講といっ
   ても自分で課題を決め、1年以上かけてグループ又は個人で自主的に研修する。
 
 2.着任研修
  ・ 図書館に異動してきた職員は、5,6日間程度の研修を受ける。
  ・ 新規採用職員も同様に5,6日間程度の研修を受講する。
  ・ この着任研修は、中央図書館で行う研修であり(例外は、移動図書館乗務と地域
   図書館館での研修)、各館配属後は、館ごとに独自の研修がある(OJTを含む)。
  ・ 嘱託員については、中央図書館で2日間、配属された館で3日間の研修を行って
   いる。
 
V.町田市立図書館が抱えている課題について
 1.職員問題
  ・ 基本的には、専門職制度の導入を目指している。相模原市立図書館との相互利用
   を開始した1998年12月から導入した嘱託員制度とのバランスを取るためにも
   必要(正規職員と能力や気力の逆転現象が生じつつある)。ただし、自治体職員と
   しての自覚を持った図書館員を養成するため、2職場程度の異動を義務付けたい。
  ・ 2001年4月以降、町田市役所全体で「人事異動基準」が策定され、それに基
   づいた人事異動が行われているが、図書館の有資格者については、現在のところ適
   用を受けないことになっている。
  ・ つまり、有資格者については、本人が図書館外へ異動を希望しない限りは、図書
   館で仕事が続けられることが原則になっている。
  ・ 有資格者であれば、意欲的に仕事に取り組むことがより一層求められるはずであ
   るが、そうでない職員も少なからず存在することが問題になっている。
  ・ 一方、新規採用職員については、「ジョブ・ローテーション」が適用され、3年
   毎に3か所の異なった職務分野の職場に配置する。つまり、10年後でないと自分
   が希望する職場に配置されない。
  ・ 主査・係長級に有資格者が少ない。各館の奉仕係長の有資格者率は、50%であ
   り、主査・係長級の有資格者率は、45.5%である(22名中10名)。正規職
   員93名中有資格者は、42名で45.2%に過ぎず、事務系職員87名に対する
   比率で見ても48.3%でしかない。
  ・ 毎年2名分を予算措置して、司書(補)講習に派遣しているが、一方で有資格者
   が異動希望を出して異動するケースも後を絶たない。
  ・ 中央図書館には、コンピュータの端末操作が認められていない臨時職員(平日の
   月〜金曜日勤務)が3名(産休等の代替職員を除く)存在する。契約は2か月で人
   の入れ替わりも頻繁である。平日の臨時職員を嘱託員に切り替えていきたい。
  ・ 嘱託員の雇用止め(現在、原則5年)の廃止他、勤務条件の改善に努力したい。
 
 2.地域図書館構想と移動図書館の減車
  ・ 既設地域図書館の建て替えと図書館サービス空白地域への地域館建設が必要であ
   るが、町田市の図書館長期構想について、「町田市立図書館整備計画」を策定する。
   館内に設置された「図書館構想検討プロジェクト」で検討し、館内会議で決定した。
  ・ 鶴川図書館の建て替えをできるだけ早期に実現したい。候補地としては、鶴川中
   学校の移転跡地と鶴川駅前再開発ビル内を考えている。
  ・ 移動図書館車は、現在3台で運行している。2000年度に1台買い替えが認め
   られたが、実施計画では2003年度中に1台減車することになっているが、せめ
   て、鶴川図書館の建て替えまでは、減車したくない。町田市は、市域が広いため、
   図書館サービス空白地域が多く存在するので、移動図書館の果たす役割が大きい。
 
 3.図書館の利用に障害のある人に対するサービス
  ・ 障害者サービスについては、全体に見直しを行い、充実していくものと合理化で
   きるものを仕分けする。
  ・ 市民病院の第二期工事に合わせ、病院図書館を建設する。さるびあ図書館の分館
   として位置付ける。主に入院患者を対象に、図書館サービスの提供を中心として、
   インターネットによる医療情報の提供等も行う。また、児童を対象としたおはなし
   会等も実施する。
  ・ 外国人に対するサービスを充実させるため、外国語資料の収集に力を入れる。
 
 4.市内の大学図書館との連携
  ・ 各大学のサービス状況や連携に対する考え方を調査する。
  ・ 連携の可能性の範囲を具体的に検討する。
 
 5.学校図書館及び学校との連携
  ・ 学校図書館の充実を求める全国的な機運の中で、数年前から法律の改正等様々な
   政策が試みられている。学校図書館法の改正により、2003年度から司書教諭が
   配置される(ただし、専任ではなく、11学級以下の小規模校には適用されない)。
  ・ 町田市では、今年度から小・中学校全校に図書指導員(有償ボランティア)を配
   置することになった。
  ・ 「市立図書館と学校図書館の連携およびサービスについて―提言―」(1998
   年11月6日付け)が町田市立図書館協議会から出されている。
  ・ 「町田市立学校図書館充実検討委員会報告書」(2001年3月)が出された。
  ・ 「総合的な学習の時間」が今年度から、本格導入された。
  ・ 調べ学習等への対応を図っている。 → 「く・る・と便利な図書館利用案内」、
                       「あ・る・と便利な資料編」
 
 6.文学館構想
  ・ 「町田市における文学館のありかた−町田市文学館構想に関する提言委員会答申」
   (2001年8月7日付け)が出されている。
  ・ 町田にゆかりの作家の資料等を収集・保存・展示することにより、町田らしい地
   域文化の創出に役立てる。
  ・ 市内に文学館を建設し、町田に関わりのある作家や文学作品等の資料を収集・保
   存・展示を行う。また、文学に関心を寄せる市民が互いに学び、交流し、発表する
   機会や場を提供する。
  ・ 図書館内に文学財産活用担当を配置している(専任職員1名、兼任職員1名)。
 
 7.その他の図書館事業
  @ 子育て支援(提案中)
  ・ 子育てに関する広範な情報(困ったときの相談先の紹介なども含め)を提供する
   ことによって親たちの子育てを支援する(子育て情報提供事業)。
  ・ 図書館と関連部署が連携し、親と乳幼児が集まる機会を利用して、子育てにおけ
   ける絵本の役割・必要性等の理解を深めてもらう(絵本で結ぶ親と子のふれあい事
   業〜ブックスタート〜)。
 
  A 中小企業支援(一部実施中、一部提案中)
  ・ 企業経営に有効な資料・情報を積極的に提供することで、企業活動の活性化を図
   る。
  ・ 従来、中央図書館レファレンスコーナーで、一般の調べもの・調査事項として処
   理してきたが、新たに会社情報・新製品情報・信用情報・景気予測などの資料・情
   報を充実させ、市内の中小企業者や起業家が必要とする情報を気軽に活用できるよ
   う、商工観光課、商工会議所等と連携して支援を行う。
 
 8.組織機構
  ・ 大規模な組織にふさわしい組織機構にする。 → 中央図書館及び一定規模の地
   域図書館を課相当に位置付けたい(鶴川図書館建て替え時に変更をめざす)。
  ・ 市政情報課の事務分掌のうち「市政情報の収集及び提供に関すること」について
   は、図書館の所管にする。 → 「市政図書館」を設置し、地域資料、特に行政資
   料について図書館が一元管理する。
  ・ 市民部が所管している市民センターの図書室は、現在2室あるが、図書館とは別
   組織のため、資料費の少なさだけではなく、本来利用者が持っているはずの諸権利
   が保障されていない。
 
 9.システム更改
  ・ 前回の更改 ハード 1996年11月(端末の更改は、1997年度)
          ソフト 1990年導入以来未更改
  ・ 2003年度に更改を予定している。システム更改検討プロジェクトで検討中。
 
 10. 都立図書館再編問題
  ・ 都立多摩図書館が廃棄処分した約10万冊のうち、約5万冊の資料を町田市で保
   管している。
  ・ 町田市が単独で利用するのではなく、多摩地域の公立図書館が共同で利用できる
   体制を作るまで一時的に預かっている。
 
 11. その他の課題
  ・ ベストセラーの複本購入問題
  ・ 広域相互利用の問題
 
W.21世紀の図書館像(情報化に対応した今後の図書館のあり方)について
 1.喧伝されている今後の図書館像
  ・ 地域電子図書館構想(実際は、ハイブリッド図書館ではないか)
  ・ 地域の情報拠点としての機能の拡大
  ・ 新しい通信技術の導入・活用
  ・ 既存の図書館資料の電子化・データベース化や新しい電子資料の収集・提供
  ・ インターネットや商用オンラインデータベースなどの外部の情報源へのアクセス
 
 2.問題点
  ・ 貸出しを軽視する風潮が強まっている。ベストセラーの複本購入についても日本
   ペンクラブ等から批判がある。
  ・ 図書館は、何をするところかを常に問い続ける必要があると思う。図書館の基本
   的機能は、利用者が求める資料・情報を的確かつ迅速に提供することであり、時代
   を超えた普遍性を持つのではないか。
  ・ 図書館法第17条(無料の原則)が揺らいでいる。
  ・ 町田市立図書館は、すべての市民に無料で公開されるべきであるという原則的立
   場を堅持したい。
  ・ どのような図書館を求めるかは、納税者である利用者・住民が決めること。
 
 

 
 
町田市立図書館整備計画(案)
目 次
はじめに
T.町田市立図書館のサービス理念と目標及びサービス等
 1.町田市立図書館のサービス理念
 2.町田市立図書館の目標
 3.町田市立図書館のサービス
 4.中央図書館の機能
 5.地域図書館の機能
 6.情報化に対応した今後の図書館のあり方
U.町田市立図書館協議会の答申とその後及び現状分析
 1.町田市立図書館協議会の答申とその後
 2.現状分析
 3.まとめ
V.地域図書館建設計画
 1.既設地域図書館の建て替えと地域図書館の新設
 2.学校図書館の地域開放と地域文庫
 3.市政図書館
 4.保存書庫
 5.病院図書館
W.移動図書館の今後のあり方
 1.移動図書館の役割
 2.町田市の現状
 3.今後のあり方
X.「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」と町田市立図書館整備計画
Y.町田市立図書館協議会の「提言」について
 1.「町田市図書館システム等の空白地域への取り組みに関して(提言)−1994年
  答申から7年が経過して−」について
 2.提言に対する図書館としての考え方
 3.(仮称)図書館整備計画策定委員会の設置について
 
 
 はじめに
 1990年11月に中央図書館が開館して11年余りが経過した。この間に図書館を取り巻く状況は、大きく変化し、特に情報化に対応した新たな図書館のあり方が議論されている。
 一方、中央図書館建設後の町田市立図書館の整備計画については、町田市立図書館協議会の答申「町田市の今後の図書館システム等について」(1994年5月24日付け、以下「答申」)がある。しかし、答申後7年以上経過しているにもかかわらず、図書館サービス空白地域解消に結び付く動きは見られない。「答申」をどのように評価し、図書館整備計画をどのように進めて行くべきかを議論するために、遅きに失した感はあるが、1997年7月に図書館構想検討プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトにおいて、長期計画の策定をはじめとした図書館の諸課題を検討することになったのである。
 「町田市立図書館整備計画」(以下、「計画」) の策定にあたり、町別人口、町丁別有効登録者数及び登録率、移動図書館統計等の基礎資料を検討したが、「答申」の骨格については、基本的に踏襲すべきであるとの結論を得ることができた。「答申」の細部については、時代の変化、あるいは自治体を取り巻く環境の変化により、計画の見直しが必要とされている部分も少なからずある。
 更に、「答申」については、その後の動きとして、金森図書館の建て替え以外に見るべきものがなかったため、図書館協議会から、「町田市図書館システム等への空白地帯への取り組みに関して(提言)―’94年答申から7年経過して―」(2001年7月30日付け、以下「提言」)が出されている。この「提言」と「計画」との関係であるが、「提言」については、可能な限り「計画」に反映するように努めた。すなわち、「計画」は、「答申」及び「提言」を踏まえた図書館の長期計画という位置付けを持つことになる。
 「計画」については、今後20年以内に達成すべきものである。特に、鶴川図書館の建て替えと小山田または忠生地域の新館建設は焦眉の課題であり、数年以内に実現させることにより、図書館サービス空白地域の最大部分の解消を図る必要がある。
 他の既設図書館の建て替えや地域図書館の新たな建設をすすめることにより、「いつでも、どこでも、だれでも」利用できる図書館網を完成させたい。
T.町田市立図書館のサービス理念と目標及びサービス
 1.町田市立図書館のサービス理念
 図書館の基本的な機能は、利用者が求める資料や情報を提供することである。図書館が何のために存在するかといえば、人がよりよく生きるためである。
 町田市立図書館は、「いつでも、どこでも、だれでも利用できる図書館」をモットーとして、次の理念を掲げる。
  A 市民生活とまちづくりに役立つ図書館
  B 市民と共に成長する図書館
  C 市民に信頼され支持される図書館
 2.町田市立図書館の目標
 町田市立図書館は、次のことを目標として活動する。
  @ 市民生活をより深く、豊かなものにすること。
  A 市民が現代社会を生き抜く力を獲得するための手助けをすること。
  B 市民が積極的に市政に参画できるようにすること。
  C 生涯学習の拠点にふさわしいサービスを確立し、市民の信頼を獲得すること。
  D 子どもたちが豊かな心と生きる力を育むことができるようにすること。
  E 高齢社会にふさわしいサービスを展開し、老後の生活を豊かなものにすること。
  F 社会の中核を担う勤労者に対するサービスに力を入れ、町田市の活性化を図るこ
   と。
  G 図書館の利用が困難な人々へのサービスを重視し、あらゆる人々が図書館を利用
   できるようにすること。
  H 利用者との対話を重視し、新たな市民文化の創造拠点となること。
  I 市議会議員、市職員に対し、政策立案の支援を積極的に行い、市政を活性化する
   ことに役立つこと。
 3.町田市立図書館のサービス
 町田市立図書館は、次のサービスを展開することによって、上記の目標を達成する。なお、より具体的かつ実践的な「町田市立図書館サービス計画」を別途策定する。
  A 資料の提供(収集・保存、貸出、予約)
    図書館の資料は、市民に利用されてこそ、その存在価値がある。町田市立図書館
   は資料の有効活用を目指し、市民生活の身近に図書館網を整備して、自由で利用し
   易い図書館づくりを行う。資料の構成にあたっては、市民の教養や学習・レクリエ
   ーション等に応えられる幅広い収集を行い、市民の生涯学習の拠点として機能させ
   ていく。
  B 情報の提供(レファレンス、読書案内)
    図書館は、市民の「知る権利」を支援し保証する。しかしながら、現在の情報化
   社会に於いては、市民間に情報活用能力の格差が生じてきている。この高度化複雑
   化した膨大な情報の中から、市民の求める情報を公平に提供する事が、今後強く図
   書館に期待されていくであろう。急速に変化していく時代に適切に対応できる、専
 
   門知識を持った職員の配置と、情報収集機能の充実が急務である。又、町田市立図
   書館以外の図書館との相互協力ネットワークをも活用し、より質の高いサービスを
   展開していく。
  C 町田市に関する資料・情報の提供
    郷土・町田の歴史・文化・行政に関する資料・情報を積極的に収集し、保存する。
   この活動を通じて、市民の行政への参画と、地方自治の発展を目指す。
  D 施設・機器の提供
    図書館は、市民の憩いの場、資料や情報を活用して調査・研究を行う場として、
   来館した市民が快適で満足できる図書館空間をつくり出していく。又、図書館に関
   連する活動を行う団体に対し、その活動を積極的に支援するために、会議室・録音
   室・印刷室等の図書館施設の提供を行う。
  E 集会事業
    価値観の多様化した現代社会に於いては、市民が図書館に求める要望も多様化し
   ている。町田市立図書館では、各種の集会事業を実施し、新たな市民文化の創造拠
   点となる事を目指す。
  F 対外サービス(学校、地域団体等)
    図書館サービスは、館の内部だけにとどまるものではない。地域で読書推進活動
   を行っている団体や、学校への支援活動を実施する事で、豊かな読書環境の形成が
   はかられる。町田市立図書館はこの活動を通じ、市民の図書館への支持と協力を深
   め、新たな図書館利用者層を獲得していく。
  G 図書館利用が困難な人々へのサービス
    町田市立図書館は、市民の身近に中央図書館・地域図書館・移動図書館とが緊密
   に結びついた図書館システムを構築していくのはいうまでもない。更に、図書館の
   利用が困難な人々(障害を持つ人々・病院に入院通院中の人々・高齢者・外国人)
   へのサービスを考慮し、あらゆる人々が、図書館サービスを受けられる体制づくり
   を行っていく。
 4.中央図書館の機能
 町田市立中央図書館建設にあたって1986年につくられた「仮称町田市立中央図書館建設計画書 第一部」では、中央図書館を地域の図書館であるとともに、各分館や移動図書館などを有機的に結びつけ、それらの中心として町田市域全体に対して責任をもつ図書館として位置づけている。そのために、(1)地域図書館としての機能 (2)各分館等との連絡調整機能 (3)市民のための集会機能 (4)資料の保存機能  (5)他館(三多摩各市の図書館、都立図書館など)との連絡協力機能 を充実させたいとしている。
 その当時、5000uを越える規模の市区町村立図書館がほとんどない中で、中央図書
館をどう位置づけていくか、暗中模索の状態だったと推測できる。現実に、(1)(2)(5)はその機能を果たしていると思われるが、(3)市民のための集会機能 として考えられる“図書館の集会活動”と“市民の自主的な活動の場の提供”では、前者は児童向けおはなし会や映画会を積極的に行っているが、後者は当初の思惑と違って集会室の一般開放はむずかしい状況にある。(4)資料の保存機能 も開館後11年以上経過した現在では、書庫が一杯になりつつあり、地域図書館あるいは三多摩の公立図書館との分担保存あるいは共同保存も本格的に考えざるを得ない。
 そこでこれからの中央図書館の機能を考えると、次の四点があげられる。                                          
  @ 地域図書館としての機能
    市の広さの割に図書館の数が少ないこと、町田駅の近くに位置しているため通勤
   ・通学または買い物ついでの利用が多いことなどから、中央図書館も地域図書館と
   しての機能を担っている。つまり、一般の大人や子どもが気軽に図書館に来館し、
   書棚を見て日常生活や趣味に役立つ本を借りたり小説やエッセイ、こどもの本が借
   りられる図書館である。                          
  A 地域図書館を越えるサービスを提供する機能
    利用者の資料要求は、年々高度になってきている。地域図書館ではスペースや予
   算等の都合で提供できない、専門書やレファレンスブック、地域資料およびそれを
   使ってのレファレンスサービスを提供する。来館した利用者に直接サービスすると
   共に、地域図書館に来館した利用者に対し、地域図書館を通じて間接的に資料の貸
   出やレファレンスサービスの提供も行う。                  
  B 地域図書館との連絡調整機能
    町田市立図書館のネットワークの要として、資料の提供、除籍、保存、サービス
   全般について、全体の連絡調整をする機能を持つ。                                                     
  C 町田市立図書館以外の図書館との連絡協力機能
    相互貸借や相互レファレンス、図書館の紹介、資料の分担収集・分担保存等のた
   め、都道府県立図書館や区市町村立図書館、大学図書館、専門図書館等との連絡の
   窓口となる。しかし、インターネットの利用が進むと、地域図書館から他の図書館
   の蔵書検索等ができ、直接コンタクトをとれるようになって、相互貸借等における
   中央図書館の役割は小さくなることも考えられる。
 5.地域図書館の機能
 地域図書館はその地域の住民の身近にあって、住民の要求に直接応えるために貸出を主体としたサービスを行い、市政への住民参加を促進するための場の提供等も視野に入れた図書館づくりを行う必要がある。また、その地域の学校、保育園、福祉施設等に対する直接サービスの拠点ともなる。
 今後の地域図書館の建て替え・新設は、町田市の地形や財政状況等を鑑み、駐車場・駐輪場のある中規模館が必要である。これは今後も図書館を市内に多数配置することは難しく、利用圏域も1.5q〜2q程度を想定せざるを得ないためである。
 また、次のような機能を充実させる必要がある。
  @ ある程度のレファレンスは徹底して行える体制
    住民が身近な図書館で、ある程度のレファレンスサービスを受けられるように体
   制を整える。
  A 身近な図書館であるからこそ得られる雰囲気
    高齢者や乳幼児及びその父母、児童、生徒等生活圏域が限られる人たちにも気軽
   に利用でき、生活の一部として感じられるような雰囲気を作るよう努力する必要が
   ある。
  B 集会活動、行事の実施と施設の提供
    専用のおはなし室、集会室等の設備を設け、集会活動・行事の実施・施設の提供
   等が行えるようにする。条件が整えば、行政への住民参加を促進する場も考えたい。
  C 地域図書館で対応しうるハンディキャップサービス
    対面朗読室(録音室兼)等の設備を整えることにより、現在中央図書館で集中的
   に行っているハンディキャップサービスを地域図書館で対応しうる業務について分
   散させる。これにより中央図書館まで行かなくても身近な図書館でサービスを受け
   られるようにし、利用者への利便をはかる。
  D 開架フロアーの閲覧席等の拡充
    学生等の部屋貸し・席貸しのように利用されている読書室(学習室)は設置せず、
   図書館資料を利用する人のために開架フロアーに閲覧できる椅子や書見台等をでき
   るだけ多く配置する。
  E 学校図書館との連携を進めるための体制
    学校や学校図書館と連携を深め、児童・生徒が豊かな想像力と生きる力を身につ
   けることができるように、学校図書館の充実への側面的援助や総合的な学習への対
   応に向けた体制を整えることが必要である。
  F AV(オーディオ・ビジュアル)資料の貸出
    文字資料では表現できない文化を継承するために、地域図書館でも音楽・映像資
   料の貸出を行う必要がある。
  G 分担保存も考慮に入れた書庫
    開架部分から溢れた資料の保存については図書保存館の建設という考え方もある
   が建設自体が難しい状況にあるため、市内各図書館での分担保存ということも考慮
   する必要がある。
  H その他
    1993年(平成5年)1月10日付け町田市立図書館協議会の答申「さるびあ
   図書館の独自性について」により、子どもの読書センターとしての機能をさるびあ
   図書館に持たせている。これにより、団体貸出および再利用図書の事務局や、学校
   図書館への連携窓口を現在行っている。今後更に市内各図書館が展開する児童サー
   ビスが有機的に結ばれるよう調整する機能をさるびあ図書館が持つ必要があり、そ
   のためのシステムも必要である。
    また、各地域の特色を生かした機能をその地域図書館の一部として持たせること
   も今後検討する必要があると考えられる。
 6.情報化に対応した今後の図書館のあり方
 生涯学習審議会社会教育分科審議会計画部会図書館専門委員会の報告「図書館の情報化の必要性とその推進方策について−地域の情報化推進拠点として−」(1998年10月27日付け)においては、「地域電子図書館構想」を打ち出し、「郷土の歴史的資料」や
「地域の生活にかかわる各種の新しい情報」を「可能なものから電子化していくことが望まれる」という提言がされている。
 また、生涯学習審議会答申「新しい通信技術を活用した生涯学習の推進方策について」(2000年11月28日付け)においては、図書館の今後の在り方として、「情報通信技術を積極的に活用することにより、『地域の情報拠点』としての機能を飛躍的に拡大する好機」であるとしている。
 更に、このような動向を踏まえ、地域電子図書館構想検討協力者会議の報告「2005年の図書館像〜地域電子図書館の実現に向けて〜」(2000年12月)が出された。この報告は、「公立図書館は情報化への対応(地域電子図書館としての機能の整備)によって住民へのサービスの新たな展開を図るべきであるとの視点に立」って、「地域電子図書館像」を提起している。
 加えて、2000年12月8日付け生涯学習審議会社会教育分科審議会図書館専門委員会報告においても、「新しい情報通信技術の開発・普及は、図書館から離れた地域の住民や障害のある人々など、図書館を利用しにくい状況に置かれた住民について、きめ細かな図書館サービスを提供できる可能性を拡大しつつある。」としている。その活用については、「新しい通信技術の活用」として、「コンピュータの整備、インターネットへの接続、衛星通信受信設備の整備など、新しい通信技術の導入・活用を積極的に進めるとともに、既存の図書館資料の電子化・データベース化や新しい電子資料の収集、提供等を行うことにより、従来の図書館サービスの大幅な拡大・高度化が期待される。」との記述がある。
具体的には、「電子資料の作成、収集及び提供並びに外部情報の入手に関するサービス」、「インターネット等を活用」(検索システム、情報発信)、「電子メール等の通信手段の活用」「情報通信機器の整備等による新たな図書館サービスの提供」が挙げられている。
 以上の動向を見ると、世の中すべての流れが「IT」や「情報化」一色になっていることから、公立図書館もあらゆる面で「電子図書館」化することが求められているかのごとき錯覚に陥ってしまいかねない。
 ここで注意が必要なのは、「資料の電子化」と「電子図書館」とは同一のものではないということである。資料や情報のデジタル化の必要性は、否定できないが、すべての資料がそうなるわけではないし、その必要もない。活字形態の資料(本や雑誌)は、なくならないし、建物としての図書館がなくなるわけでもない。もちろん、上述の「地域電子図書館構想」も、すべての図書館資料を電子化せよと主張しているのではなく、建物としての図書館が不要であると述べているわけではないが、「電子図書館」というイメージだけが一人歩きしているという印象は、どうしても払拭し難い。むしろ、「ハイブリッド図書館」という用語の方が適切に思える。
 いずれにしても、利用者の求める資料・情報を提供することが図書館の本質的機能であり、その機能自体を変える必要はない、というのが町田市立図書館の基本的な立場である。 情報化をめぐって、もう一つ看過できないのは、図書館法第17条の解釈の問題である。第17条は、「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」と規定している。前述の1998年10月27日付け図書館専門委員会報告の解釈は、ここで規定する「図書館資料」とは、「通常、図書館によって主体的に選択、収集、整理、保存され、地域住民の利用に供されている資料を指すと考えられる。したがって、図書館においてインターネットや商用オンラインデータベースといった外部の情報源へアクセスしてその情報を利用することは、図書館法第17条にいう『図書館資料の利用』には当たらないと考えるのが妥当である。」としている。その結論として、「電子化情報サービスに伴う通信料金やデータ使用料などの対価徴収については、それぞれのサービスの態様に即して、図書館の設置者である地方公共団体の自主的な裁量に委ねられるべき問題」であるとしている。この解釈には、大いに疑問がある。
 図書館法第17条の「無料の原則」は、少なくとも、同法第3条で規定している図書館奉仕の各項目については、無条件で適用があると解釈すべきであろう。もちろん、第3条に挙げられていないサービスについても、第17条の意義を踏まえた上で、費用徴収の適否についての判断を個々にすべきである。
 自分自身で考え、判断し、行動できる市民の存在は、民主主義社会にとって不可欠の前提である。ましてや、地方自治、地方分権が文字どおりの内実を持つためには、このような自立した市民が一人でも多く存在することが必要であり、それを根底で支えるのが公立図書館である。そのためには、公立図書館が無料で「知る権利」を保障することが第一歩となろう。町田市立図書館は、図書館の利用について、すべての市民に無料で公開されるべきであるという原則的立場を引き続き堅持したい。
 
 なお、手嶋孝典氏講演会の録音テープをお聞きになりたい方は事務局までご連絡下さい。