「日野市立図書館40年の取り組みと窓口委託問題を考える」集会報告
 山口源治郎氏の講演に先立ち、16ミリフィルム『図書館とこどもたち』(日本図書館協会編 わかば社 1980年制作)の上映を行った。市内初の大型分館、高幡図書館が生まれる直前の日野における児童サービスの様子が写し出されていて、映像に出てくるこどもも母親たちも職員も実に生き生きとしているのに驚かされた。市民と図書館が共に歩もうとする姿、よい図書館を共に創り出そうとする姿が、日野には確かにあったことをまず再確認できたのではないだろうか。引き続き、小林代表から委託問題に関するこれまでの経過報告があり、その後、山口氏の講演「日野市立図書館40年と取り組みと委託問題を考える」に移った。

 以下、山口氏の講演要約

 「魔法の杖あります」という新聞投書の例を引き、1960年代後半のベッドタウン化や社会基盤の未整備、子育て環境の悪化といった社会情勢を背景に、行政が確かな理念に基づいて図書館サービスを展開したことが、市民に受け入れられ、引いては「市民の図書館」として全国に野火のように広がった歴史的経過を解き明かしていただいた。まさにそれは図書館革命であったという。
 こうした日野市立図書館の40年の実践に対して、今回のカウンター委託の提案が示された訳だ。25年前の京都市の委託から始まり、東京23区の窓口委託、桑名市のPFI、北九州市などの指定管理者制度の導入と、急速に図書館のアウトソーシングが図られる状況だが、京都市の例を見ても、当初の通年開館の破綻や雇用における違法状態が恒常化し、問題が起きたとき行政と財団のどちらが責任をとるのか曖昧化した状態に至っているのが現状だ。
 委託がもたらすものは何か。果たして図書館サービスはよくなるのか。図書館サービスは利用者と職員のコミュニケーション関係を通して行われるものだ。選書や運営方針の作成、職員の成長等々、そうした実践の中から築かれていくものだ。市民と最も接する大事なところであり、直接的な利用者サービスを委託することは図書館の命取りになる。それは教師と生徒、医師と患者の関係と全く同じだ。
 また、分館単位での委託だが、分館は地域の市民が最も利用するところであり、図書館システム自体そのものを壊すことになる。中央館と分館の運営は一体のもので切り離せるものではない。
 専門性を有する職域への嘱託職員の導入についても、専門性が必要だからこそ正規の司書職員が必要なのではないか。市として経験のない分野ならわかるが今まで支えてきた専門職員がいるところに何故導入するのか。図書館とは何なのかを行政も市民もいっしょに考えて欲しい。
 最後に、日野という位置、その意味を考えたい。日野市と東村山市(注:設置条例に館長の有資格条項が規定されている。)がこけたら全国への波及ははかり知れない。他の自治体の理事者側はそれを待っているのだろうが。調布市の委託の問題から10年、多摩地域の図書館はいったい何をしてきたのかが問われてもいる。金が無いから即、官から民へという思考停止状態が問題。何故委託がいけないのかそれぞれが自分の言葉で伝える必要がある。日野の図書館は「公」だから出来た訳だ。行政としての責任を果たしてきたことをもう一度確認すべきではないか。日野の図書館に問題もあることは事実。図書館員と市民がその問題についていっしょに議論することが必要だ。


質疑応答

○ 窓口委託を実施している23区のある区の例からの発言:レファレンス、選書、クレーム処理、督促、庶務等以外の窓口全般を委託。委託職員の構成を見ると、家庭の主婦、若い女性、図書館で働きたいが就職先が無いので一時的に委託職員になっている人。主婦以外は定着率が悪い。時間単価は800円。司書率は2〜3割か。研修費がないので経験なし。委託が実施されて職員は半減した。職員の引きこもり現象があるのではないかとの指摘もある。職員はクレーム処理、督促処理など楽しくない仕事(?)にあたる。図書館の経験のない職員も増えているから当然か。

○ 東京の図書館をもっとよくする会からの発言:区内の図書館で委託実施館に対してアンケート調査をした。委託が実施されたことでの変化は、効率化、財政的な面。人件費を抑えられた。祝日・夜間など開館時間の延長。全館のサービスの統一化が図られた。仕様書に決められた通りにやるからか。というような回答があったが、サービスの改善が本当になされたのかは疑問。

○ 障害者サービスは委託や指定管理者制度の導入でどうかわるか。プライバシーについては民間だから守れないというのは言えないが、図書館での読者のプライバシーを考えると不安がある。
→職員:宅配を有料化するというような話が出ているが、図書館が作りだしている障害を取り除くという意味での障害者サービスという認識から考えると論外ではないか。
→代表:区部での個人情報の目的外使用の事例があった。会としてもプライバシーの件で、民間だから守れないとは言えないが2・3年で替わっていく委託職員ではより守りにくいのではないか。

○ 日野の図書館は日本の図書館を牽引している。

○ 市政図書室の実践を評価したい。行政情報の収集能力の高さを認めたい。
→山口氏:市政図書室の仕事は実に評価できる。ただ40年を経て内部的な問題もあるのではないか。それは専門職がもっている問題と公務員がもっている問題である。自分たちがもっている問題をどこまで自覚できるか。司書として、社会の変化に対する鈍感さ。例えば児童サービス。子どもたちの置かれている状況を直視していない。自分たちの領域に入るなという態度が窺える。役所の中で特別な人たちと見られる。市政全体の様子を知らない。
→代表:職員と市民がなれ合っていないか。指摘されたような問題を共に考える場としてこの会を立ち上げた。市民運動としてよりよい図書館を考える機会としたい。

○ 日野の図書館は私たちの誇り、財産である。

○ 浦安市立図書館の故竹内氏の「日野の図書館があったからこその浦安図書館」という発言を聞いたことがある。この言葉を日野の図書館の位置づけとして捉えたい。利用者とのコミュニケーションの重要性を感じている。委託の問題はそれを切り離すことになる。シドニーの図書館の例で、リーガル・インフォーメーション・アクセス・センターの所長の言葉。子どもたちは幼い内から自分たちの暮らしにとって必要な資料や情報は何か、図書館との関わりを学ぶ。図書館は生きていく上で必要な情報「クオリティー・オブ・ライフ」を提供するところだという。図書館を考える上で示唆にとんでいると思う。

○ 日野の図書館に欠けているところとして、中高生の読書離れへの対応を求めたい。先進図書館から学んでやってもらいたい。窓口の委託なんて論外だと思う。


代表から最後にひとこと
 過去の栄光にすがっているようでは終わりだねというようなことを言われたが、そうでは無いと思う。誇りがあるからこそ未来があるのではないか。過去を正当に評価して明日につなげることが必要ではないか。今後、委託問題についてのパンフや第二弾の集会を考えている。今後も市民の運動を拡げて生きたい。行財政改革大綱中間報告に対する意見をこれからもそれぞれが自らの言葉で出していっていだきたい。議員さんたちにも積極的に訴えていって欲しい。最後に入会とアンケートのご協力をお願いしたい。
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