日野市立図書館40年の取り組みと委託問題を考える
山口源治郎(東京学芸芸大学)
○ 「魔法の杖あります」

 @『朝日新聞』の「声」欄(1969年11月24日)
 A図書館は知識の社会保障機関
   有山ッ(たかし)さんの思想
   →図書館展示「有山ッと日野市立図書館の40年」

○ 日野の図書館は何をめざしたか、どんな図書館か

 @ 昭和30−40年代の多摩地域
   都市郊外の急激な変貌
   →ベッドタウン化、社会基盤の未整備、子育て環境の悪化…
     住民運動の発生、子ども文庫づくり、図書館づくり

 A 図書館が「来る」まち
   「誰でも、いつでも、どこでも」
   →移動図書館ひまわり号からはじまった

 B 図書館革命=「これが公共図書館だ」
   圧倒的な利用と市民の支持
   「おんな子ども」の発見
   移動図書館ひまわり号からはじまった

 C 新たな展開
   地域図書館計画
   市政図書室の活動

○ 「図書館の委託」とはどういうことか

 @ 第3次日野市行財政改革大綱(中間報告)の委託提案

  <委託・合理化など>
   「図書館カウンター事務等及び分館の委託」
   「図書サービスの有料化」(宅配サービス)
   「図書館業務などの定型業務…の民間委託」
   「専門性を有する職域への嘱託職員の導入」
   「自動貸出機の活用によるコスト削減」

  <サービス改善など>
  高齢者サービス、病院図書館サービス、障害者サービスの拡大、
  図書館施設のバリアフリー化、夜間・祝日開館(日野、平山、百草)、
  平山図書館の複合化、他市との資料の分担収集、共同保存庫、その他

 A 図書館の委託25年から何を学ぶか

  ・ 京都中央図書館の委託(1981)
   「非根幹業務」を社会教育振興財団に委託
   柔軟な運営、民間の活力導入、通年開館などを謳う
   業務の不合理な分断
    「非根幹的業務」=カウンター・サービス(貸出、レファレンス、資料案内など)
    根幹的業務=資料選定、企画、財務、人事など(この部分を市職員が担当)
   サービスの向上が望めない図書館
    カウンターに立たない職員が選書?
    低賃金のため激しく入れ変わる職員(専門性の蓄積や職員集団の形成が難しい)
   通年開館の破綻
   違法状態の恒常化
     職業安定法違反
   行政責任の曖昧化(責任取るのは行政と財団のどっち?)

  ・ 急速に広がる図書館のアウトソーシング(外部委託)
   東京23区での「窓口業務」委託
   桑名市のPF
   北九州市などの指定管理者制度の導入

 B「委託」によって何が起こるのか(委託の何が問題か)
   →「ライブラリー・フレンズ日野」のコメント 

  ・図書館サービスはよくなるの?
   図書館サービスは、利用者と職員のコミュニケーション関係を通して行われる
   →選書、運営方針、職員の成長…
   直接的な利用者サービスを委託することは図書館の命取り
   →教師と生徒、医師と患者の関係と同じ

  ・ 図書館システムは大丈夫?
   中央館と分館の運営は一体
    中央館と分館を別々の団体が運営してうまく行くのか
    →中野区、大田区など

  ・ 「専門性を有する職域への嘱託職員の導入」?
   専門性が必要だからこそ正規の司書職員が必要なのです。
   →委託図書館の最大の問題がこの職員問題

おわりに −何をすべきか 

資料

○ "魔法のツエ"あります(投稿)
童話の本の高いことを嘆かれ、将来への大きな可能性を秘めている子どもたちに、魔法のツエで世界の童話の本の値段を、タダに書き換えてしまいたい……といわれる「声」(19日付)を読み、感無量です。
 私たちの住む日野市には、その魔法のツエがあります。おかげで市民はタダで思う存分読書ができ、大人も子どもも1人4冊まで2週間借りられます。その期間に読み切れない場合は、さらに2週間の継続ができます。市内には3カ所の図書分館と都電を改良した児童専用図書館と移動図書館「ひまわり号」が市内を巡回して便宜をはかってくれます。読みたい本を希望すれば、ほとんど手に入り、高くて個人ではちょっと手が出せない本でも楽に読み、鑑賞することができるので大助かりです。
 わが家の家計簿からは本代の費用が消え、その上、狭い家にツンドク本もふえず、結構ずくめです。まして3人の子どもたちは、一生を通じて心の刺激と、かけがえのない財産をつかむことになるでしょう。(38歳・主婦)                 (『朝日新聞』1969<昭和41>年11月24日)

○ 日野市立図書館の運営方針

運営の重点
イ、 市民の身近に図書をおき「誰でも、いつでも、どこでも」図書館サービスが受けられるようにする。
ロ、 利用者の要求する図書は万難を排し提供するように努める。そのため、@書誌・書目を多数収集し、的確な検索をはかる。A図書館側の主観による資料のおしつけをしない。B利用者の要求に応じ、図書の購入計画をたてる。C要求によっては、充分な複本を用意する。D古い図書、利用の稀な図書については、国会図書館の援助を求める。
ハ、 図書館という建物をもたない新しい図書館運営について市民の理解を求める。
ニ、 的確に資料を収集し、整理する。
ホ、 学校図書館との協力を深める。
運営の方法
イ、 自動車文庫により資料の貸出しサービスを行う。
ロ、 配本所を設置する。
ハ、 分館を設置する。
ニ、 まず図書のみに力を集中して資料収集を行う。
ホ、 配本所と同等の扱いで、学校図書館へ資料を提供する。
(日野市立図書館『業務報告』昭和40・41年度)


○ 日野市立図書館の図書館サービス

1. サービス実績
          貸出冊数(内児童書)     貸出密度   資料費(千円)
    1965   65,537 (34,724)    0.93       5,019
    1966  165,671(114,414)    2.17      10,147
    1967  381,290(236,401)    4.81      11,916
    1968  456,574(273,986)    5.43      11,406
    1969  462,258(264,989)    5.08      11,416
    1970  526,792(278,404)    5.20       9,447

2. 図書館の地域配置とサービス網の形成

   1965.9 移動図書館によるサービス開始(37st.)
   1966.6 高幡図書館
   1966.7 多摩平児童図書館
   1967.7 福祉センター図書館
   1979.7 社会教育センター図書館
   1971.4 平山児童図書館
   1972.4 百草台児童図書館
   1973.4 中央図書館

  以下、分館配置想定図が掲載されている。(省略します)
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