?  田原だより2000年7月25日 ?
 
 
 このビデオ(「図書館のひとびと」)は図書館システムとかネットワークといわれる仕組みのことと図書館が地域でどのような役割を果たせるのか、その可能性を描いたものです。皆さんは、どのような感想をもたれたでしょうか。
 
 最初にインタビューに答えていた女性が、図書館があることで、いろいろなものが読める、好きでないものでもよめるというようなことをおっしゃっていました。ごく当然のお話ですが私はこの女性のインタビューを見て、前に勤めていた日野市の市役所の知り合いのことを思い出しました。その人は,必要な本は自分で買っているから、自分は図書館がなくても別に不自由はしていない。今時、本を買えない人はいないのだから図書館に税金を使うのはおかしいというのが持論だったのです。
 私は図書館員ですから、おせっかいかもしれませんが、こういう人がいると図書館は無くてはならないものだということを説明しなければ気が済みません。何を言うかというと、結局、この女性と同じ事を言うのです。「図書館があることで、いろいろなものが読めて世界が広がる」ということです。
私たちは自分のお金で本を買えるといっても大金持ちではないわけですから、本に使えるお金は限られています。買う本は、仕事や趣味などに使う本、みんなの話題になっているベストセラー、あるいは自分が好きで、良く知っている作者の本などに限られます。  
一方で、町に図書館があれば、何でも無料で借りられます。図書館の書架の前にたつと誰でも知的な好奇心を刺激されます。自分が知らなかったことや、自分の興味から少々外れる本でも気軽に借りて帰ります。そんな時にはすばらしい本との出会いがあります。
私ナルニア国物語を読んだのは学生になってからですが、この本を子どもの時に読んでいたらどう感じただろうかと思いました。図書館で出会った本について、感動して、この本をもっと若いときに読んでいればと思わせられるような本がきっとあります。
 それから図書館では相談ができます。はじめはこういう本はどこにありますかという単純なことから、面白い時代小説は無いかとか、読めば気持ちが落ち着くような本を紹介してなどという難しい質問もありました。とにかく一生懸命みなさんのお手伝いをする図書館員がいるのが本当の図書館なのです。
 それから図書館と本屋さんには違いがあります、本屋さんにはベストセラーが何冊も置いてありますが、図書館では話題の本はだれかが借りているので、たいてい残っていません。リクエストをしていただいて、順番を待ちます。その点では本屋さんにかないませんが、図書館ではその代わりに、内容は立派でもあまり売れそうにない本や、もう絶版になって本屋さんには置いていない本もあります。
 結局、図書館の特徴は無料で借りられる、相談できる図書館員がいる、色々な本があるということです。その図書館にゆくとあれも読みたい、これも知りたいという好奇心を満たしてくれ、いつも気持ちよく利用できる図書館であれば、ひとりひとりの世界がいつのまにかひろくなってゆきます。
 めいめいが自分のお金で本を買うよりも、図書館を使う方が何倍も心豊かに暮らしていただけると私は思っています。図書館は利用されればされるほど、職員も鍛えられ、本を買う予算も認められます。田原町の図書館を良い図書館にするコツは、皆さんが自分の図書館として使っていただくことです。ぜひお使いいただきたいとお願いします。
 
 それから、図書館は小さく産んで大きく育てるというわけにはゆかないという話がありました。まったくその通りなのです。ビデオの中で枚方市の中央図書館を大きくする計画があるという話をしていましたが、実はあれから10年以上たった今でも小さいままなのです。私の経験でも、小さくて窮屈なサービスをしている図書館でも、現に図書館としてあるわけですからそれを大きくするのは大変難しいのです。
 その意味では図書館建設の最初のプランがとても重要です。田原町の場合は、平成8年の図書館建設構想委員会が立派な答申をされています。蔵書35万冊で4000uの規模としたものです。今回の図書館設計は、規模の面ではこの構想を根拠として、実現しました。田原町図書館は、始めから十分な大きさをいただきました。広い室内に使いやすい高さの書架をおきます、天井の高さも十分で、中庭も配置されています。館内の多くの場所に机や座席を配置します。広々として明るく、利用者どうしがある程度の距離感を持ちながら、快適に過ごすことのできる図書館であり、長い年月にわたって町民の利用に十分にこたえられる図書館になりました。
 町立図書館としては、全国でも指折りの大きさです。何よりも図書館の内部の空間のつくりは、これからの図書館づくりのモデルとされるだろうと私は思っています。
 
 ビデオの中で、八日市図書館の西田館長は市民の資料要求に必ず応えることが図書館の役割であることを強調されていました。そしてその仕事を継続的に、情熱的に追求する職員、職場をどうしたら作れるかをいつも考えているとおっしゃっていました。
 私もまったく同感です。田原町図書館でも町民から求められた資料を提供する、必要とあれば「草の根を分けても」求められた資料を探す、そのことに喜びを感じてくれる職員と一緒に仕事をしてゆきたいものです。図書館員として働くことが楽しいと思えるような職場を作ってゆくことが、田原町での私の役割だと思っています。
 ところで、私が図書館の運営について大事にしてゆきたいと考えていることは2つです。2つだけです。ひとつは利用者へのホスピタリティの高さです。町民・利用者の役に立ちたいと思っていることが伝わるような応対、サービスができることです。貸出カウンターや相談カウンターでの応対はもちろんですが、フロアにいるときにも声をかけられます、電話での応対ももちろん、おろそかにできません。
 資料について詳しいことと、親切な応対ができることが図書館員として力量があるということです。その両方がないと利用者から信頼を得ることができません。本について質問をすると言うことは、その人の内面を語ることでもありますから、図書館員への信頼感がないと質問もできないのです。(例:法律)先ほど、読めば気持ちが落ち着くような本を紹介してほしいという質問があったということをお話ししましたが、それは本当にその利用者が求めていることですが、利用者と図書館員との間にある関係ができないと出てこない質問でもあるのです。その意味で、ホスピタリティというのは、単に応接のマニュアルがあって、上手にできるということではありません。にこやかにしているということだけではありません。
 図書館は、求める本や情報が手に入り、人と出会い交流の場所にもなります。図書館員は、心豊かな暮らしと精神的な自立をもたらす仕事に関わることであり、図書館員という職業に誇りをもっていればこそ高いホスピタリティが実現するのだと思っています。
 
 私が大事にしていきたいもう一点は、住民がいろいろな形で参加してくださる図書館であることです。
 人間は人の役に立つ、人と人が支えあうことに喜びを感じます。そのような社会参加が豊にできる町が住みよい町ではないでしょうか。その意味で、図書館も社会参加、ボランティア活動の舞台として積極的に提供する必要があると思っています。図書館員には、ボランティア活動を望む住民へのコーディネーターとしての役割もあるのです。
 図書館のボランティア活動としては、障害者への援助や子どもたちに読書の面白さを伝える仕事に携わっていただけます。また図書館祭りや図書館報の作成などにも参加していただいて職員と一緒に図書館活動を発展させていただきたいと思っています。
 単に人手としてのボランティア募集ではなく、参加者の満足度が高く、しかも図書館活動に豊かさをもたらすような参加のあり方が大事になると思います。
 八日市図書館では、筏川という雑誌を住民と協同で編集・発行している様子がビデオにありました。この情報広場も住民・図書館フレンズと和設計、準備室の協同事業として取り組んでいます。
 住民との協同で事業を行うことは図書館にとっても大事なことです。というのは、図書館も年を取ります。創立の時、何もかも新しくひとつひとつの仕事をどのようにしていくのかを考える時期には特有の活気があります。しかし、年が過ぎ落ち着いてくると、仕事の範囲や進め方が固まってきます。
 図書館の外側の社会が変わってきているのに、図書館のあり方はこわばったままということになりがちです。
 そんな時、ボランティアとして、あるいは納税者のひとりとして図書館の活動に参加してくださる。図書館と関わりを持ってくださることが、図書館のこわばりをほぐして、いつも使いやす気持ちの良い図書館であることにつながります。
 図書館をボランティア活動などの舞台にして住民と図書館員が交流することは、ボランティアにとっても図書館にとっても非常に大事な取り組みになると考えています。