「多摩地区の小中学校図書館の現状は?--学校司書の眼から」というテーマで、国立市立第三中学校の学校司書、川真田恭子さんを講師にお迎えして、第3回懇談会が12月15日(日)、立川アイムで行われました。25名の参加でした。 1. 多摩地域の学校図書館職員の雇用状況 ・ 2002年10月現在、小中学校の図書館に職員が配置されている自治体は都内で13自治体。 ・ 多摩地域では、日野・西東京・国立・多摩・三鷹・国分寺・狛江・調布・町田の9市に配置されている。国分寺と調布は行政側から、他の7市は市民運動から配置された。(詳細は当日のレジュメを参照) 2. 雇用状況における課題 ・ ほとんどの自治体が嘱託職員で、雇用期間も短い.(年度更新も最長のところで6回) ・ 資格を問わない自治体もあり、勤務時間数も短く賃金も抑えられている。そのためか、同一自治体の中でも、やる人とやらない人の差がすごく出てきている。研修が必要である。 ・ 一人職場で、職員会議に出席することもできない、声を出す場がない状況で、学校運営の中での位置付けが曖昧である。 3. 学校図書館(国立市の場合) ・学校図書館の現状 委託嘱託員として入った当初は、4,800冊の蔵書の内、廃棄したい本が半分位あった。科学の本は20年以上前のもので、比較的新しい本では担当教諭の専門科目の本が多いなど蔵書構成がアンバランスだった。 蔵書数に比して複本数がきわだって多いものがあり、修学旅行に使う『奈良の大仏』といった本が、40冊(=1クラス全員分)もあった。 予算も97年は35万円しかなかったのが、努力により、今年度は90万円になった。来年度は、学級数が減り、学校全体の予算が減額される予定にもかかわらず、資料費は維持される予定で、学校側の理解が深まってきている。 ・教師と学校司書の協働 「教師はサブジェクトの専門家、学校司書はメディアの専門家」と竹内さとる氏が言っていたが、各々の仕事の分担をし、教師と学校司書が協働していく必要がある。 ・学校図書館と公共図書館の連携 現在の学校図書館の体制・蔵書では、生徒の要求(調べ学習等)に対応できない。 学校図書館相互の協力と公共図書館との連携が必要になる。また、資料の運搬についてはどこの自治体でも問題にあがる。運搬の便を確保する必要がある。(ex. 東村山では、市内巡回に学校も含めて契約している。) ・総合的な学習と図書館 今年度から総合的な学習の時間がはじまり、教師と学校司書が一層協働していく必要がある。学校図書館に学校司書がはいっていかないと調べ学習の準備ができない。教師の熱意と努力だけでは、とても対応できないだろう。 4. 司書教諭と学校図書館職員 学校図書館法の一部改正に伴い、平成15年度から12学級以上の学校では司書教諭が必置となるが、教師との兼任では、現状となんらかわらない。 昼休みの一部と放課後のわずかな時間だけ開けるのでなく、学校に子どもと教師がいる間、常駐する人が必要。職員会議等の場に学校司書も参加できるような環境を作っていくこと、校務分掌に図書館を入れてもらうことなどが必要。 また、公共図書館の図書館協議会のメンバーになる等して、学校図書館について声を出せる機会を作っていくことが必要である。 5. 21世紀の学校図書館 そうぞうりょく(想像力・創造力)を養い、知識・思考・調べるスキルを培って、生涯学習へ導く。 生徒の自立を助ける学校図書館。 学校司書は成長過程の特定の年令層の専門家であるべき。 6. 公共図書館に望むこと 公共図書館は、研修、相互貸借、選書情報の提供等で学校図書館をバックアップしてほしい。また、不登校の子どもたちへのサービスにも取組んで欲しい。 不安定な雇用状況にもかかわらず、熱心に学校図書館を支えている学校司書の皆さんや「都下の学校図書館を考える会」の方々の参加で、意見交換は白熱し、2時間半では時間が足りなく、皆さん、言い足りないように感じました。特に、平成15年度から12学級以上の学校では司書教諭の発令が必須になるというのに東京都教育庁では団体からの要請を受ける窓口となる部署も年度当初は明らかになっていないというお粗末ぶりに、不安が集中しました。 |
【記録】多摩むすび 第3回懇談会の報告