【記録】これまでの運動を振り返って

○昨年9月に都立図書館の再編計画を知って以来、私たちは今日までその撤回・見直しを求めて運動を続けてきました。この間、多摩地域の多くの市民・図書館職員はもとより、この問題を危倶する全国の方々から、物心両面に渡る多くのご支援をいただきましたことを、ここに改めてお礼申し上げます。
 
○私たちの運動は、具体的には18,700名の署名を添えた都議会への「請願」という形に収斂しましたが、その請願は先の東京都議会で、「保留」という扱いになりました。「保留」」とは、残念ながら事実上の「不採択」です。その後の進行は、多摩図書館資料の「再活用」の実施など、ほぼ都側が意図したとおりのものです。こうした一連の経過を考えれば、私たちの運動は敗北であったというほかありません。
 
○一方、運動の過程で、私たちが当初予想もしなかった動きが生まれたのも事実です。多摩地域の半数に及ぶ白治体議会が、都に対する「意見書」の提出を決議したり、教育長会や自治体の図書館協議会が、都に「要望書」を提出するというようなことは、近年にない異例の事態でした。こうした動きが、都の既定の方針こ少なからぬ動揺を与えたのも事実です。
 
○しかし、私たちが所期の目的を達し得なかったことは、冷静に見つめておく必要があります。実行委員会としては、主として次の点に対する取り組みが不十分だったと考えます。
★都立再編問題への危機感または関心を、一般の図書館利用者各層や図書館に働くより多くの職員に広げること。
<原因>
・実行委員会の体制が当初から職員中心であり、市民を主体とする運動になかなか転換できなかったこと。
・都立図書館そのものが、市民にはわかりにくい存在であったこと。
・問題に積極的に取り組む職員と、無関心な職員との意識のズレを埋めきれなかったこと。
★多摩地域の図書館関係団体や、都議会、都の図書館団体等に対する政治的な働きかけ。
<原因>
・各団体や組織の現状や内部事情に対して、実行委員会の認識が乏しく、有効な人脈等も作れなかったこと。
 
○また、これまでの運動を通して、次のような課題が見えてきました。
★図書館職員が、日常的に図書館を利用している多様な利用者を、十分に図書館支持層にしきれていないこと。
★都立図書館の運営に、専門職が専門職として関与しえない状況にあること。
★都立図書館協議会、東京都教育委員会、都議会文教委員会といった民主的な都政運営を保障するはずの組織・制度が、相当程度に形骸化していること。
★東京都の行政運営が、きわめて閉鎖的・独善的・非民主的なものになっていること。
★多摩地域には、一定の職員と市民のネットワークが存在すること(または可能なこと)。
 
○以上を踏まえて、私たちは今後次のような姿勢で、運動を継続・発展させていくべきだと考えます。
 都立図書館再編問題は、新たな段階を迎えました。自治体議会や教育長会の申し入れ、都民の請願などで批判の声が高まっても、東京都は予定通り平然と計画を押し進めようとすることが明らかになりました。そういう都のやり方に対しては、やはり毅然として反対の意志表明をしていかなければなりません。
 しかし、これからは再編計画への批判の声だけではなく、より具体的な対抗案を対置する中で、多摩地域の図書館のあり方は如何にあるべきかを、現実的に考えていく必要があります。都立多摩図書館が行ってきた市町村とともに創り上げる図書館サービスを評価し、それをさらに継続発展させていく方策を、住民と住民の身近で働く図書館職員がともに考え、具体的に提起する方向に戦術を転換しなければなりません。そのためには、運動の母体も新たに組織し直される必要があります。
 本日をひとつの区切りとして、私たちは新たなスタート地点に立ちました。市民、職員、研究者がひとつになって、多摩地域の図書館のさらなる発展を期した、粘り強い運動を展開したいと考えます。いっそうのご支援とご協力をお願いします。
 
2002年4月22日
都立多摩図書館があぶない!住民と職員の集会実行委員会
【記録】これまでの運動を振り返って

トップへ戻る