【記録】砂川雄一氏講演会『日野の図書館の流れについて』 要旨

                                  2000年6月18日(日) 
                                   日野中央福祉センターにて

砂川雄一氏のプロフィール

1932年 生まれ
1953年 文部省図書館養成所卒業
同 年 東京農工大付属図書館
1974年 日野市立図書館長
1987年 日野市教育次長
1989年 日野市助役
1993年 退任 
現 在 法政大学講師
砂川雄一氏論文・著作リスト
今回の条例改正の背景

 地方分権 地方自治
  ①権限の配分
  ②住民の意思の反映がどれだけなされているか
  ③財源 館長の有資格条項 

日本の公共図書館の推移

 戦前の図書館 国の統制の下の図書館 思想善導
 戦後の図書館
 1.アメリカ教育施設団の勧告

 2.図書館法の成立 1950年 公共図書館の3原則
  ①無料の原則
  ②公開の原則
  ③公費負担の原則 
 
 3.中小レポート 1963年 有山崧 
  ①図書館の本質的な機能は資料の提供
  ②中小公共図書館こそ公共図書館のすべて
  ③住民サービスこそ図書館サービスの出発点
  ④大図書館はバックアップ図書館

 4.日野市立図書館の誕生 1965年      
  ①中小レポートで示した方向を実現させてみせた
  ②建物のないの図書館設置条例を作る
  ③資料費が当時の図書館の10倍
  ④1台の移動図書館でスタート
  ⑤日野市立図書館は中央館・分館から構成される
  ⑥最低基準を下回ってはならない⑦図書館長は専門職職員

 5.『移動図書館ひまわり号』(初代館長前川恒雄著)
  ①本を貸すことに徹する
  ②勉強部屋ではない図書館
  ③サービス網
  ④図書費の増額
  ⑤重点的な施策

 6.『業務報告』(1965・66年)
  ①資料・情報の提供
  ②なんでも貸し出す
  ③自立した市民の存在
  ④読め読め運動をしない
  ⑤全域サービス
  ⑥子どもへのサービス

現在の公共図書館の考え方・理念

 1.本質的な機能は資料を提供即ち貸出である
  ・利用の拡大
  ・古い体質の変容
  ・利用者自身の目的に応じて、市民の多様な考え方に応じて   
  ・図書館本来がもっている多様性  

 2.市町村図書館こそ公共図書館のすべてである   
  ・住民への直接的な責任を負っているのは第一線の市町村図書館 

 3.すべての住民にサービスする   
  ・読書をどう保障するのか   
  ・施設
  ・分館
  ・移動図書館
  ・中央図書館
  ・リクエスト
  ・障害のある人へのサービス・プライバシー等さまざまな課題 

 4.図書館は建物のことではない   
  ・資料提供の働きとそれを担う組織   
  ・建物の限界を超えられるし、超えてサービスをしなければならない   
  ・有機的なシステム
 
 まとめ

 1.予算
  ・市民サービスの必要経費
  ・大幅な削減は市長からの説明が必要   
  ・図書購入費を政策的経費に   
  ・すべての市民の利用につながるのだから政策的経費としてとらえるべき 

 2.将来構想
  ・現在のような困難な時期に将来を決めてしまうべきではない 
  ・市民参加を得て希望ある政策を創るべき 

 3.市民がスポンサー 
  ・行政機関のひとつとして動いているとつぶされる 
  ・市民をとりこむ 
  ・次のステップにかかっている時期 
  ・市民からより高いレベルのものを要求していく   
  ・図書館を市民側から評価しそれを図書館につきつけ互いに議論し共通した認識を深めることが大切 
質疑応答

 1.館長の司書である利点は
  ・館長は単に施設の管理者ではなく図書館サービス全体に責任を負う長である   
  ・将来計画、実行する組織全体のすべての責任を負う   
  ・市民へのサービスをどうやったらできるかを任され、それに応えられる専門的な方針を出せる  
  ・有資格は最低条件 

 2.児童書の貸出の減少について  学校図書室に嘱託員を置いた経緯は   
  ・図書館側で議論されて進められたのではない   
  ・少子化、子どもたちの生活パターンの変化等さまざまな原因が考えられる   
  ・図書館の集めた本と子どもたちの関心のずれ   
  ・選書における教育的配慮がなされた 

 3.図書館法第13条3項と第4条の問題   
  ・当時としては設置条例に館長の有資格条項を謳った自治体はなかった
  ・今回の日野の条例改正による全国への影響は大きい
  ・設置条例の改正に先立ち事前に措置をとらなかったことが問題

 4.専門的職員がサービスするのだから市民はそれを黙って受ければよいという雰囲気が感じられる 図書館は市民とともに歩かなければいけないのではないか、どうかかわったらいいのか      
  ・専門職という看板が見えてしまったらそれだけで失格
  ・市民が要求するものを提供する過程で専門性が発揮されればよい
  ・資料を提供することの喜び
  ・図書館に対する市民の評価
  ・勉強会などで感じ方を出しあって議論し共通認識を深めていく

 5.より多様なニーズに応えていくためには ベストセラーズのリクエストの対応は   
  ・限られた予算の中でどう応えていくか
  ・日々蓄積される知識・経験、専門性
  ・日野の図書館全体として調整し購入する

なお、砂川雄一氏講演会の録音テープをお聞きになりたい方は事務局までご連絡下さい。

砂川雄一氏講演会アンケート集計

2000年6月18日 日野中央福祉センターにて開催
参加人数 41名  アンケート回収枚数12名分
 
(1)きょうの講演会はいかがでしたか。1つ選んでください。
 
良かった      9名(大変良かったと記した人 1名)
普通        3名
あまりよくなかった 0名
 
感 想 

・やはり歴史の渦中にあった人のお話は、迫力があるとおもいました。
・ひと口に図書館といってもいろいろなのだということがよくわかりました。
・輝かしい歴史と実績から、だんだんに離れていく今の実態の中で、再構築の時代だからこそ、強く信念をもって、広いビジョンで考えるのが大切であること、市民と一緒に、市民の力を借りて図書館を作っていくことを考えさせられた。
・日野の図書館の歴史を再確認できた。図書館と市民との関係をもう一度考え直す機会となった。「資料提供」について考え直す機会になった。
・砂川先生の生き様にも感動しました。大変良かったです。もっとまわりの友人に声をかければよかった。
・砂川氏のお話がとても良かった。いろいろなことが知れて良かった。「専門職の看板を感じさせる職員ではいけない」とても重く大切な言葉ですね。
・知らない部分を理解することができたように思います。
 
(2)この講演は何で知りましたか。(複数回答有り)
 
ちらし   3名
広報    2名
友人・知人 7名
その他   3名(会からの手紙)
 
(3)日頃、図書館を利用していて感じていることを自由にお書きください。
 
・実用書が古い。(和洋裁・手芸・趣味・旅行等)
・二階の世界の都市地図をもう少し充実してほしい。
・閉館時間が早く、平日に行くことができない。休日に予定が入ると図書館に行くことが難しくなる。遠いこともあって、利用したいのになかなかできないのが現状です。
・日野市の図書館の問題は、こと日野市だけの問題ではなく、わが国の公共図書館界全体の問題です。
・他市(地方)でも利用しますが、古いものから新しいもの固いものから軟らかいものと歴史でしょうか、置かれていることはよいことだと思いました。
・ここ1年以上、忙しすぎて本を借りに行く暇がつくれなく、本を買うことも多かったが、お金が大変であった。夜間のサービス時間の延長を求めたいと思っている。
・明るい雰囲気で気軽に利用できる点が良いと思う。
・リクエストでほぼ目当てのものがそろうのですが、日にち等がかかる場合、必要な日に間に合わない場合がある。
 
(4)今後、この会に望むものがありましたらお書きください。
 
・夏はクーラーのきく部屋にして欲しいです。今日は眠くなって困った。
・そう大きな部屋ではありませんでしたが、講演者のことを考えると、マイクがあれば良かったと思います。
・利用はしますが、図書館に関して知らぬことがおおいことに驚きです。いろんな分野で知らせて下さい。
・働く者としては厳しいが、市民からの図書館評価を形にして出してみてもいいと思う。
・市民と図書館職員がより高い理想、展望を計画し、その実現化に向けて一歩一歩前進していくための力になれたらすばらしいと思います。
・利用者の図書館から見た図書館サービスの評価をし、反映できるような影響力を持っていただきたいと思います。
・会則について。(例)街の人々が誰もが豊かに人間らしく生きる支えとなるような図書館づくりをめざす。
・より幅広いメンバーで活躍できると良いと思います。現状の報告や利用している市民の率直な感想などとりあげてほしいです。
・開かれたものになってほしい。身近に利用でき、サービスに徹していただきたいし、いろいろな分野のものがそろうことが嬉しく感じる図書館になるように思
います。 

講演会「日野の図書館の流れについて」開催の報告

日時:2000年6月18日(日) PM2時~4時
場所:日野市中央福祉センター
講師:砂川雄一氏(第二代日野市立図書館長)

 上記のように「日野の図書館を考える会」主催の講演会が開かれました。講演の内容は日野市立図書館の開館時から現在に至るまでの経過と、35年前、日野の図書館が掲げた新しい図書館サービスは全国の図書館に影響を与えたが、現在また図書館界は新たな問題を抱えていることなどを、元日野市立図書館長としての豊富な経験をお持ちの砂川氏らしい率直さで分かりやすく話されました。まとめとしては、行政は予算を「市民サービスの必要経費」と捉え、すべての市民の利用につながるものなので政策的経費として、大幅な予算削減には市長からの説明も必要。また将来構想は、現在のような困難な時にこそ市民参加を得て希望ある政策を考え、市民がスポンサーとして図書館に関わり、より高い要求を出していくことがこれからの図書館を考える上で重要であり、行政機関のひとつとして動いていては潰されてしまうと注意を喚起されました。前夜まで降っていた激しい雨も上がり大勢の市民が参加して講師のお話に熱心に耳を傾け、その講演会をきっかけに日野の図書館の歴史と今後の図書館の有り様を考えていくきっかけになればと思いました。
 最後にこちらの不手際で2時間以上もお立ちになったまま、講演を続けられた砂川先生がお疲れではなかったかと反省し、お詫び申し上げます。     (文責 久保田)
【記録】砂川雄一氏講演会『日野の図書館の流れについて』 要旨

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