【記録】東京都立多摩図書館の資料70万冊の大幅が消える!?

-まず14万冊廃棄 11月から年度内のうちに 今後は指定分野だけの書庫に?(東京都立図書館再編問題について)
 
東京都立図書館とは?
 
東京には3つの都立図書館があります。立川市にある都立多摩図書館、港区広尾の都立中央図書館、それに都立日比谷図書館です。役割は少しずつ異なりますが、共通する特徴は、自治体の図書館を強力にバックアップしてくれる「図書館の図書館」だ、ということです。
 経験された方も多いと思いますが、古い本、貴重な本などを自分のまちの図書館にリクエストしたら、「都立○○図書館」というラベルの貼られた本が届いたというようなことがなかったでしょうか。それは、もう手に入らない古い本、自治体の図書館ではちょっと買えない高価な本も、都立図書館が購入し保存しておいて、各図書館の求めに応じて届けてくれるシステムが出来上がっているからです。区市町村立図書館がそれらをすべて自前で用意しようとすれば、大変な経費が掛かります。そこで、都立図書館がそういう役割(「協力貸出」)を引き受けているのです。
 そればかりではありません。「協力レファレンス」というのもあります。区市町村立図書館に寄せられる「調べもの」が、その図書館の資料で十分に回答できない場合、都立図書館の担当者が膨大な資料を駆使して調査し、各図書館に回答してくれるシステムです。
 こうした区市町村への都立図書館の支援機能は、現在の図書館サービスになくてはならないものです。システムの背景があって、格別に時間もお金の余裕もない普通の都民がいろんな本や情報に比較的気楽に手が届くのです。特に多摩の市町村には都立多摩図書館の存在が不可欠です。市町村の図書館は身近にありますが、小規模で調査能力も保存体制も貧弱なところが多いです。一方、都立多摩図書館は地域のバックアップに大きく重点を置いた「多摩の都立図書館」でした。
 
問題のある再編計画
 ところが、いま都立図書館の役割と機能が、大きく見直されようとしています。
 この4月に都庁内に「都立図書館のあり方検討委員会」(都立中央図書館長が委員長)という組織が設置され、7月には「中間まとめ」が出されました。それを受けて8月末に「今後の都立図書館3館の運営について」という計画が出されました。
 そこには、
 ①都立中央を中心館とし、日比谷・多摩は分館と位置づけ、3館の一体的運営と収蔵・サービスの役割分担を行う。全都立図書館としてこれから同じ本は1冊しか収集・保存しない。
 ②都立図多摩は「児童・青少年資料、小説エッセイ類、多摩行政郷土資料の図書館」と位置づける。
 ③都立日比谷は、これまで特徴だった児童・青少年資料を多摩に移管する。
と書かれています。
 これだけでは何のことか分かりませんが、その後の情報を総合すると、
(1)これまでの「1点永久保存」(古い本でも、最終的に1冊は都立のどこかで永久保存する)の方針を改め、「現有書庫容量」に収まる分しか保存しない。
(2)都立多摩と都立中央に同じ本がある場合は、中央の分を残して多摩の分は基本的に廃棄する。
(3)都立日比谷の児童・青少年資料(約16万冊)はすべて都立多摩に移す。(日比谷を廃館する意向では?との見方もある)。
(4)従来の都立多摩の独自予算、独自収集は止めて、1点1冊を都立中央で収集し、分配する。都立多摩の地域分担のバックアップ機能は止めて、都立中央で「一元的」に全都内の協力事業を行う。
(5)都立多摩の郷土行政資料も、純粋に多摩地域に関するものだけの収集・保存とする。
(6)都立多摩の協力貸出用の雑誌もタイトル数を大幅に減らす、といったことのようなのです。
 「ようなのです」と書くのは、区市町村立図書館にも東京都民にも重大な影響があるはずの計画なのに、都民はもとより区市町村の図書館にも未だに何の説明もないからです。12月中に最終報告を出し、年明け早々にも知事査定で決定をするそうです。
 しかも、当初15年度に予定していた都立日比谷からの児童・青少年資料の都立多摩への搬入を、耐震工事のため日比谷が休館している今年度中に実施・完了する。その搬入スペースを生み出すためには都立多摩の資料約14万冊を今年度中にまず廃棄する、とのことです。
 
何が問題なのか
 具体的には、次のような問題点が危惧されます。
(1)1千2百万都民の資料要求に、都立中央図書館だけで対応することになるので、これまで区市町村の図書館を通じて行われていた協力貸出が事実上できなくなったり、資料の到着には何週間もかかるようになる可能性が大です。また、全区市町村の図書館からのレファレンスに対して、中央図書館1冊の本で対応するのは不可能です。調べものに十分な回答ができなくなるでしょう。
(2)場合によってはこれまで都立多摩で用が足りていた多摩都民が、わざわざ広尾の中央図書館まで足を運ばなければなりません。たとえ行けたとしても、全都民に対して基本的に1冊の本で対応しようというわけですから、閲覧できないこともおこるでしょう。
(3)今年度中に都立多摩の14万冊の資料をまず除籍し、市町村へ再活用(払い下げ)に回すということですが、もともと市町村の図書館は第一線図書館として保存機能は最低限しかもてていません。だからこそ都立多摩が貴重だったのです。どれだけ受け取れるでしょうか?多少は各市で受け取れたとしても、お金と人手をかけて蓄積してきた貴重な都立多摩の資料が散逸します。今年度の14万冊を第一歩として、これまで三多摩都民全体に役に立ってきた都立多摩の70万冊の蔵書の大半が廃棄、散逸されるのです。
(4)都立多摩に置く行政郷土資料も、純粋に多摩に関するものだけに制限されるので、多地域の都民にとっては東京都全体に目配りされた行政・郷土資料が手に入れにくくなります。
 
 こうした計画が進められる背景に、東京都の厳しい財政事情があるのは確かです。都立図書館の資料費も97年度に比べて今年度は48%も減っています。「一体的な運営」とか「運営の効率化」といっても、今回の再編案の意図が、実は資料費や人件費の削減にあることは疑いありませ。図書館に限らず、ここ数年、東京都は多摩地域の施設や事業の縮小・廃止を次々に進めてきました。新たな「三多摩格差」を生み出しかねません。財政危機の対策を多摩へのしわ寄せで行っていないでしょうか。
 自治体財政が厳しいのはどこでも同じです。だからこそ、いま都や区市町村の職員は互いに知恵を出し合う必要があるはずです。それは図書館システム全体の利用者であり納税者である都民も同じです。システムの裏側なので見えにくいが一回一回の資料の請求時に真っ先に影響を受ける三多摩の都民にこそ、まず情報公開と了解が求められなければならない。しかし、今度の再編計画では、それが全くなされていません。
 
住民・職員の集会を!
 まず多摩地域の図書館職員有志50余名で、10月10日に緊急集会を持ち別紙の東京都への「申し入れ書」を作り、運動を始めました。さらに「都立多摩図書館のこれからを考える集い」を三多摩の住民・利用者の方と一緒に開催することにしました。ぜひ皆さまのご参加をお願いします。署名活動も行っています。
 
利用者の方、都民の方、それぞれの議論を!運動を!
 11月26日の集会への参加をぜひお願いしだいですが、さらにむしろ図書館の利用者として納税者として三多摩の東京都民として、皆さん自身が情報収集し地域でいろいろな場・形でこの問題を話しあい、有識者・有力者に状況を伝え、動いていただきたいと思います。 
三多摩の図書館システムを守り、育てよう! 

【記録】東京都立多摩図書館の資料70万冊の大幅が消える!?

トップへ戻る