【記録】都民にとっては都立図書館とは-どんな仕事をしているの? そして、これからどうなるの?-

 今、都立図書館は大きな曲がり角に来ています。 財政難に端を発する書庫の限界、資料費の大幅減は東京都に限らず、区市町村にも共通の悩みです。しかし、人間の叡智の集大成である資料は、今ここにいる私たちだけに留まらず、遠い過去から引き継ぎ、未来へきちんと手渡していかなければならない財産です。ここで歩みを止めるわけにはいきません。 21世紀、「地方分権」=自分たちで考えていく時代にふさわしい、都民の都民のための都民による都立図書館を創っていくためにも、知恵を出し合いましょう。 まず都立図書館を知っていただくために、このリーフレットを作りました。 

Q1 都立図書館はどこにありますか?

都内に3館あります。

館 名 ℡場 所蔵書数(冊)
面積(㎡)
中央図書館
03-3442-8451
港区
有栖川宮公園200万
200万
23,196
日比谷図書館
03-3502-0101
千代田区
日比谷公園
50万
10,154
多摩図書館
042-524-7186
立川市
東京都多摩教育センター
108万
19,998
Q2 都立図書館は都民の役に立っていますか。

 確かに直接行って利用している人は都民の一部です。でもみなさんも地元の区市町村立図書館を通して、都立図書館のサービスを受けています。例えば…①協力貸出制度 都立図書館は区市町村立図書館が用意できない本や雑誌を貸出します。都民は直接来館せずに区市町村立図書館を通して借り出せるのです。 それらの資料は都立の協力車で、各自治体に毎週1回届きます。②協力レファレンス制度 区市町村で解決できなかった場合、都立図書館の豊富な資料を駆使して専門スタッフが引き継ぎます。そして関係資料を協力貸出して利用者に届けます。 

Q3 都立図書館に行ったら、「協力貸出中」と言われてがっかりしました。協力貸出などせず、足を運んだ来館者を優先すべきだと思います。

 交通費や時間を使って都立図書館に行ける人は限られます。特に都立中央、国立国会図書館に遠い多摩地域では大変です。しかも読み終わらなければ日参しなければなりません。 また、各区市町村立図書館が利用者の必要とする資料を全て購入・保存する事は不可能です。 そこで都立図書館が広範に資料を収集・保存し、都民は身近な区市町村立図書館から借り出す事で、東京都全体として資料を効率的に利用できるわけです。

Q4 都民への直接的なサービスはありませんか。

 直接的なサービスとして主に閲覧とレファレンスサービス(調査)があります。調査依頼は電話やEメールでも受けています。 また、インターネットの都立図書館ホームページ(http://www.library.metro.tokyo.jp)では、資料検索など様々な情報を提供しています。最近は、インターネットで所蔵情報を確認してから、地元の図書館にリクエストする利用者も増えています。

Q5 区市町村立図書館は都立図書館に頼るだけですか?

 区市町村立図書館は都立図書館から借りるだけでなく、お互いの資料も貸し借りして、2000年度には多摩地域や23区から、約3万件の本や雑誌が多摩地域の自治体に貸出されました。これらも都立図書館の協力車が運びます。資料の運搬手段を都立図書館が負担する事で、相互貸借制度が活きてきます。他にも総合目録の編集など、都立図書館は都内の公立図書館を結ぶ図書館ネットワークの要として、重要な役割を担っています。また、1981年に都立多摩(当時:都立立川図書館)が全国に先駆けて、多摩地域に雑誌の貸出しを始めて以来、市町村立図書館は廃棄する雑誌を都立多摩に移管してきました。多摩地域の市町村立図書館は、都立多摩を東京都の図書館員と共に築いてきたのです。

Q6 話題の都立図書館再編計画とはどこで作られたものですか。その経過は?

 都立図書館内部の「都立図書館のあり方検討委員会」(2001年4月発足:以下「あり検」)の中間まとめ(2001.7.13)を受け、8月下旬に「今後の都立図書館3館の運営について」が出されました。 「あり検」は最終報告を12月に予定しており、まだ中間報告であるにもかかわらず、内部ではすでにこの計画に沿って作業を始めています。11/8には東京都教育委員会にも報告し、了承されました。この間、都立側から、都民に対してはもちろん区市町村立図書館に対しても積極的な説明、意見聴取はありません。 内部作業のうち特に、Q7にある児童サービスの日比谷から多摩への移譲のために、2002年春までに多摩の蔵書14万冊を処分する事に、私たちは強い危惧を感じています。

資料を「水」にたとえると… 

区市町村立図書館都立図書館区市町村立図書館
水槽蛇口  ←→貯水槽中継地  ←→水槽蛇口
双方向水道管双方向水道管
Q7 どんな内容ですか。 

 大きく分けて、組織改編(機能分担化)と資料収集・保存の方針変更です。①組織改編:都立多摩は都立中央の分館と位置付ける。

主 な 機 能
中央IT化対応
都庁内サービス
資料の一括収集・整理
協力レファレンス
多摩児童サービス
雑誌・新聞貸出多摩への配送拠点
日比谷図書の個人貸出
視聴覚図書館

 ②資料収集・保存:全都で1タイトル1冊のみ購入(今までは三館で独自に購入。)

 書庫が満杯のため、「永久保存」はやめる。

 ・都立多摩の分担:小説・随筆など文芸単行本のみ。児童書、地域資料は多摩地域のみ、協力貸出用雑誌・新聞(現在の2/3タイトルに縮小) 
 ・都立中央の分担:上記以外の全分野(よって文学は研究書、全集のみ)

※従来、都立中央と都立多摩は地域分担を基本とし、どちらでも全般的なサービス内容、資料収集をしてきました。 都立日比谷だけは個人貸出と国立国会図書館より歴史のある児童サービスを特徴としていました。

Q8 どんな影響が予想されますか?

 具体案は何も示されていませんが、余程工夫しなければサービスの水準維持は困難でしょう。

 ① 全ての蔵書が1タイトル1冊になると、多摩地域・23区の全図書館と来館者で資料の取り合いになります。特に事典、年鑑、白書などは、今でも都立中央は協力貸出しない資料が多く、保存の観点からも今後その傾向は強まる可能性があります。

 ② 従来、多摩地域は都立多摩、23区は都立中央の蔵書から貸出を受けていたので、蔵書があれば1週間以内に届きました。もし協力車増発がないと多摩地域は2週間かかる場合が増えます。まして貸出中ならもっと待たされます。(1回の貸出期間は45日間)23区も都立多摩の蔵書を借り出す場合は同様です。

 ③ 協力貸出用の雑誌タイトル数も大幅に減ると、現在同様に都立中央が協力貸出をしないと、事典や年鑑同様、都立中央まで自分で行かなければなりません。

 ④ 市町村からのレファレンスを都立中央で全部受けると、今まで以上に時間がかかる可能性があります。しかも関係資料は、手元に届かないという訳です。 

Q9 書庫が一杯なのだから処分もやむを得ないのでしょうか

 区市町村立図書館でも書庫が足りず苦労しています。しかし学校の余裕教室や民間倉庫を借りたり、高速道路の下を利用したり、努力もしています。東京都にもそういった工夫をしてほしいのです。一度処分した資料は取り戻せません。 都立に頼るだけでなく、今後は区市町村との共同書庫の設置など、多くの智恵を集める必要があります。

Q10 都立日比谷の利用は減っているそうですが。

 利用減の理由はインターネットなど外的要因も考えられますが、資料購入費の大幅減も大きな要因のはずです。 また直接来館する人は減っても、協力貸出しは過去5年間で約1.6倍増です。地元の区市町村を通しての利用が都民に定着している事を示していると言えます。

 

いかがでしたか。
都立図書館を知り、そのあり方について都民の声を届ける事が、いまこそ求められています。
都立図書館は、都民が使うためにあるのですから

 初版 2001.11.26発行都立多摩図書館があぶない!住民と図書館員の集会実行委員会 編連絡先

 図書の協力貸出数:1995年83,193冊、2000年135,099冊

【記録】都民にとっては都立図書館とは-どんな仕事をしているの? そして、これからどうなるの?-

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