【記録】教育庁事務事業質疑 

                                                                  2003/11/18                                               都議会生活者ネットワーク
                                                        山口文江
●都立図書館関連
 H13(2001)年に、都立図書館再編計画が策定された。中央図書館への機能集中、多摩図書館のサーピスを地域分担から機能分担へ変更、資料の収集保存の原則1点・1冊化、重複資料の再活用などが挙げられたが、rサーピスは充実する」と約束された経過がある。

Q1 都立図書館再編計画による蔵書の再活用に対する基本的な考え方を伺う。

A1 現在、都立図書館3館では、図書、新聞・雑誌等を含め1年間に約6万冊の資料が増加しており、数年後には書庫の収蔵能カが限界に達する見込みである。
 資料保存を原則1点とすることにより、現有書庫の範囲内で都立図書館として必要な資料を公立的に保存することが可能となる。
 都立中央図書館と都立多摩図書館で重複して所蔵している資料は、区市町村立図書館や学校等に再活用資料として提供し、有効活用を図っているところである。

Q2 H13年度に都立図書館の蔵書約10万冊が区市町村の図書館こ受け入れられたが、その後の都立図書館における再活用の方向、方法とスケジュ一ルおよび現状について伺う。

A2 H14年度は再活用資料として、区市町村立図書館等に公開した約4万冊のうち、約7000冊を提供したが、再活用の決まっていない資料については、今後も引き続き再活用を図るため、都立図書館で保管している。
 今後の再活用については、都立図書館の書庫状況や区市町村立図書館の資料の受け入れ状況を考慮しながら実施していく予定である。また、再活用の対象となる資料については、引き統き調査を進めているところである。

 意見:サーピス向上のための再編計画に基づき、重複資料を除籍はしたものの、区市町村立図書館の保存容量の限界から引き取り手が見つからず、現状では有効な再活用の道は厳しい状況とのことか。

Q3 7月に区市町村図書館に通知された「協力貸出の範囲の変更」の内容と考え方を伺う。

A3 範囲の変更の内容は、
①新刊和図書については、館内閲覧の利用者と競合することから、閲覧室の書架に並んでから30日間は、館内利用を優先するため、協力貸出を行わない。
②高価な資料については、紛失があった場合の回復が非常に困難であることから、1冊10万円以上の資料は協力貸出を行わない。
③古い資料については、全般的に傷み具合が進み、紛失や損傷があった場合の回復が非常に困難であることから、S25年以前に刊行された資料は協力貸出を行わない。
というものである。
 都立図書館では、協力貸出をはじめとする区市町村立図書館支援と、1200万都民を対象とした直接来館者サーピスを行っており、今回の区市町村立図書1館への協力貸出範囲の変更は、協力貸出と来館者サーピスの競合を防ぐとともに、貴重な資料を今後も多くの都民に長く活用していただくという考え方に基づいたものである。

意見:資料の収集・保存を3館で1点としたために、生じた「協力貸し出し制限」であり、来館者優先のやり方は、全ての都民へのサーピスにおいて格差を生むという、サーピスの低下であると考えない訳にはいかない。

Q4 また、「重複雑誌の除籍」について10月末に通知が出されたとのことだが、内容と考え方を伺う。

A4
・除籍の内容としては、
①都立中央図書館が所蔵する雑誌については、都立多摩図書館と重複所蔵している、約270タイトルの雑誌を除籍するとともに、約205タイトルの雑誌を都立多摩図書館に移管するものである。
②また、都立多摩図書館が所蔵する雑誌については、都立中央図書館と重複所蔵している、約600タイトルの雑誌を除籍するものである。
・除籍を行う考え方については、現有書庫が満杯の状況にあり、全タイトルを所蔵していくと、今後新たに購入する雑誌の収蔵が困難になると想定されることから、利用頻度が少ない重複雑誌の除籍を行う必要があると判断したものである。
・除籍した雑誌は都立図書館で当画保管し、区市町村立図書館や学校等の再活用を行う予定はないが、今後、国立国会図書館や研究機関等への提供について検討していく。

Q5 以上2つの件では、区市町村図書館との事前の協議や周知はどのように行われたのか。区市町村図書館からの反応について伺う。

A5 「協力貸出範囲の変更」ついては、区市町村等に対し、H15年1月に都立中央図書館が発行した区市町村立図書館向けの広報紙で検討中である旨を情報提供し、以後、図書館長会、教育長会での説明、通知文の送付、ホームページヘの掲載等、多様な手段で行った。
 その結果、市町村立館長協議会から、実施日の再考、変更理由の明示等の要望があったが、特にその他のご意見はなく、ご理解いただいたものと認識している。なお、当初、H15年8月1日から開始する予定であったが、都民への十分な周知を図るため、1ケ月延期し9月1日から開始した。H15年3月、一般都民、有識者を含む「都立図書館協議会」において説明を行った。
 「重複雑誌の除籍」については、区市町村立図書館に対し、10月29日付けで「都立図書館問における重複雑誌の除籍」の通知と除籍雑誌リストを送付し、多摩図書館所蔵雑誌は11月17日、中央図書館所蔵雑誌は来年1月6日にデー一タの変更および利用停止する旨、周知を図ったところである。現在のところ区市町村立図書館から、公式に要望等はいただいていない。

意見:都立図書館再編計画も「あり方検討会」答申に基づくものとして、かなり一方的に策定されたとの記億がある。今回の施策の転換も実質的な事前の協議はないに等しく、意思の疎通が不十分といわざるを得ない状況であり残念だ。現在、情報公開、行政の説明責任が強く求められているというのに、システムとしての図書館の信頼と連帯から都立図書館が一方的に降りてしまうような事態では、密接なネツトワークが必要とされる図書館間の信頼を欠くことになり、都立図書館の義務と区市町村図書館、都民の権利を損なうことになるのではないか。

Q6 以上の具体的な事例は、再編計画に基づくものだが、区市町村図書館へのパックアツプ体制のサーピス低下につながるものである。また、今後も都立図書館の資料の保存は限界があり、「再活用資料」も引き続き都立図書館外に受け入れられることになるが、区市町村図書館でも書庫は満杯状態であり、資料の再活用は共通の課題である。資料の活用を広域でサポートできる共同ストック書庫「デポジット・ライプラリー」などの構想も注目されているが、図書館のセーフティネットとして再活用資料のさらなる有効活用についてお考えを伺う。

A6 都立図書館は、参考調査図書館として、来館者サーピスも重要な都民サーピスである。また、貴重な資料を長く活用することは、現在の利用者のみならず将来の利用者にとって大切なサービスであると考える。
 デポジット・ライプラリー構想は、公立図書館において、増加する資料を有効に活用するため、あるいは、手狭になってきている書庫の現状に対する対策の一つであるかと思われる。現在の厳しい都財政の状況において、デポジツト・ライプラリーなど、いわゆる図書館のセーフテイネツト的なものに対して、都が運営したり支援することは困難な状況にあると考える。このことから、例えば、区市町村立図書館が相互に連携して、図書館のセーフテイネットの仕組みを構築しようとする際には、都教育委員会としても、相談があれば、意見を交換していきたい。

意見:都立図書館が区市町村立図書館を支援することは、恩恵でも特典でもなく、東京都の義務であり、区市町村の権利である。都立全体の一点一冊収集、保存・現有書庫容量の不拡張といった方針は「役割縮小」ということにならないか。しかしながら、都立も区市町村の図書館も財政難から資料費の削減が続いていることや、書庫の収蔵に限界が出てきたごとも大きな共通の課題である。東京の図書館システムが変質していくのをただ見ている訳にはいかない。そのことを踏まえた上、都が直面する.財政問題をはじめとする課題を区市町村と共有し、なんとか知恵を出し合って、よりよい東京の図書館サーピスのあり方をともに棲索すべきであり、今後、図書館関係者や利用者と、共同保管書庫、デボジット・ライブラリーなどの具体的な構想を描く支援と連携を強く要望する。              

【記録】教育庁事務事業質疑 

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