【記録】「今後の都立図書館3館の運営について」に対する多摩図書館職場会の見解

2001年9月19日
 
1 区市町村立図書館、図書館関係団体の意見を聞き、反映させることなしに決定できることではない。このような非民主的な決定の仕方には強く反対する。
  
 東京の図書館は、「課題と対策」以来、都立と区市町村との協力の下に都民に図書館サービスを提供していくという方針で運営してきている。今回出されているこの方針は、東京の図書館サービス全体に大きな影響を及ぼすものであり、都立図書館の内部だけで、しかも十分な論議もなく、決定できるものではない。早急に区市町村立図書館をはじめ関係団体に情報を公開し、意見を求めるべきである。
 
2 都立図書館が「現有書庫容量内」での保存を前提とし、1点収集・1点保存とすることは、協力事業の後退を招き、東京都の図書館サービス全体のレベルダウンになる。
 
 都立図書館として1タイトル1点保存は最低限の責務である。しかし、これは1タイトル1点収集と直接結びつくものではなく、1200万都民と未来の世代への責務を考えれば、必要なものは複部収集し協力貸出、レファレンス、閲覧等のサービスが十全にできるような方策を追求すべきである。
 
3 図書館サービス全体を考えた機能分担をすべきである。
 
 雑誌の「リブタイトル」「デッドタイトル」、図書の「新しいもの」「古いもの」、文学のうち「小説・随筆等」というような分け方で資料を分散させるのは、機能分担とは言えず、都立図書館へ直接来館する都民に混乱を与えるものでしかない。本当の意味での機能分担を考え、効果的な図書館利用を促進する方法を採るべきである。
 
4 多摩図書館の位置づけについて
 
 「児童・青少年、文学、多摩資料図書館」と位置づける、となっているが、3つの柱それぞれ問題があり、多摩図書館のサービスが成り立つとは到底考えられない。実態は中央図書館の書庫としてしか考えられていないのではないか。多摩図書館が開館以来、市区町村立図書館に対して果たしてきた先駆的役割をきちんととらえ、協力事業を中心とした図書館としてもっと積極的に位置づけるべきである。
 
4-1 児童・青少年資料について
 なぜ多摩図書館に児童資料を移すのか、納得できる説明はなされていない。耐震工事を終えた日比谷図書館が、再開してみたら児童資料室がなくなっているというのでは、都民の納得は得られない。一方、多摩図書館では現在書庫に入っている資料を廃棄しなければ、児童資料20万冊を受け入れる余地はない。開架室は児童の直接利用を想定した構造にはなっておらず、現状では到底対応できる状況ではない。立地条件からみても、多摩図書館で児童・青少年サービスを行うことが効果的とは言えない。しかも、昨年度、日比谷図書館(=中央図書館)で一括して収集していく方針を決めたところであり、この方針に従い、多摩図書館は今年度児童資料の購入をやめている。朝令暮改と言わざるを得ない。日比谷の児童サービスが果たしている役割を継続するためには、多摩図書館に児童資料を移すのは適当ではない。
 
4-2 文学資料について
 「文学図書館」を名のるならば、それにふさわしい蔵書構成をし、雑誌を含む関係資料の全てを多摩に移すべきである。児童資料を多摩図書館に移すよりも書庫対応が易しく、中央図書館の書庫対策上も有効であると考えられる。
 
4-3 多摩資料について
 多摩地域の資料を維持し、調査業務を行うためには東京都の行政資料は不可欠である。現在、多摩図書館は東京都の行政資料を多摩地域の都民に提供する重要な場としての位置にある。特に財政監理団体については情報開示の役割も果たしている。これは都立図書館としての重要な役割であり、資料収蔵の面だけから考えて切り捨てることはできないはずである。また、庁内サービスは多摩でも取り組んでいる。IT化が進む現代にあって、中央図書館でないと不可能であるという根拠はない。
 
5 区市町村立図書館へのサービスの低下は許されない。
 
 都立中央図書館ができて30年、都立多摩図書館が開館して14年、協力事業・参考調査・保存機能を柱に区市町村立図書館と協力しながら現在のサービスを構築してきた。この案は、そうした努力を無にしかねない危険をはらんでいる。1点収集・1点保存を徹底した場合、参考調査と協力貸出が共存できる保障は皆無であるばかりか、協力貸出自体の存続も危惧される。
 特に多摩図書館では、資料の購入から提供までの時間が現在より長くなることは確実であり、リクエストへの対応は危ぶまれ、雑誌と図書の両方を利用した協力レファレンスは不可能になり、協力用雑誌のタイトルは減らされ、協力事業担当者会や「探しています」など市町村立図書館と共同の事業の存続の可否など、危惧される点は多い。財政難の下ではあるが、どうサービスダウンしていくのかを考えるのではなく、どうしたらより良いサービスが効率的に提供できるかとの視点から考えるべきである。
 
6 具体的な資料に基づいた移行計画を示すこと。
 
 たとえ方針が決まったとしても、これだけの大きな変更を明確な年次計画も示さずに決定する事は無謀であり、図書館そのものの存在意義を問われかねない。
 当面、来年度以降に向けて、今年度の業務の見通しを明らかに示し、資料係の業務を中央図書館に集中することで予想されるサービスダウンにどう対応するのかを示されたい。

【記録】「今後の都立図書館3館の運営について」に対する多摩図書館職場会の見解

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