文責・堀 渡(国分寺市立本多図書館) 東京都立図書館では、館の運営に関し館長の諮問に応じるとともに、図書館奉仕について館長に意見を述べる機関として図書館法に定められた図書館協議会を設置している。委員数は15名、うち公募委員は3名。委員の任期は2年間であり、通常は年3~4回程度の会議を開催するという。10月になってようやく6月22日以来の協議会が開かれるというので、傍聴に行ってきた。(なお協議会は都立図書館として三館で一つの設置なので、高いところからの抽象的な議論となる。1時間半かけて、都立中央図書館まで出向いたのである。) 行ってみると、議題は、「1. 第20期協議会の提言<高度情報化社会における都立図書館のサービスのあり方―ITを活用したサービスの革新―> 2. その他」とあった。傍聴者は一般都民らしいやや年輩の方が3名。配布された委員名簿には、酒川玲子(日本図書館協会事務局長)、田村俊作(慶応大学図書館学科教授)、坂本光一(元、東京都教育長)等の名がある。しかし15名の委員のうち出席者は8名のみ。病気という國又元(清瀬市立中央図書館長)、東川志津子(葛飾区立葛飾図書館長)、小峰紀雄(小峰書店社長)など出席されれば見解を述べられたであろう名も欠席者の方にあった。 始めに、議題の(1. )があった。昨年3月に発足した第20期は、図書館側からの諮問は行われず、委員の議論により第2回以来、<高度情報化社会における都立図書館のサービスのあり方―ITを活用したサービスの革新―>を協議してきたという。今回が第20期の最後であり、協議し成文化された<提言>を委員の代表が説明し、図書館長に提出する日だという。配布されていた長文の<提言>の全文を読み上げ、賛成の再確認をし、都立中央図書館長に手渡された。 次に(2. その他)で、いよいよ都立図書館再編問題=東京都立図書館あり方検討委員会(以下「あり研」と略記)」の報告。「あり研」は今年4月に発足した。前回6月の協議会では設置の経緯だけが報告されていたらしい。従って議論の中身が協議会で話されるのは今回が初めて、しかし今期は今日で終了し来年3月頃新たなメンバーで第22期が始まるのだという。つまり議論は今日が最初で最後なのだ。 7月13日に出された「中間のまとめ」は8月中旬に協議会委員に送られていたようである。庶務課長から、今日はそれ以後9月に決定したことを追加して口頭で説明します。といって、平成14年度から都立多摩図書館で児童・青少年サービスを行う。その為に、スペースを生み出すための都立多摩の重複資料の精査を行う、との報告。説明はほんの短いものでありその後は、委員の質問が相次いだ。以下、1時間ほどもあった委員と館側のやりとりをQ&Aの形式で略述していく。 委員側Q;都立図書館の役割をどのように考えるのか?効率性と役割に齟齬を生じているではないですか。 館側A;役割が変わるわけではない。効率性を高めることが今回の眼目です。 Q;日比谷のサービスはどうなるのか? A;今後、児童サービスは行わない。一般サービスを行う。 Q;保存機能は都立として大事ではないか? A;ダブルでは保存できない。一点一冊。今年度中に多摩で14万冊を再活用にまわす。 Q;一冊だけで、利用のための保存となるのか疑問。市町村に利用させるための保存ではないのか?ダブり(複本)をはずして、現在は入れられてもいずれ、満杯になりますよね。今後の展望を示さなくては都立の信頼を損ないますよね。それで何年もつのですか? A;(しばらくの沈黙)一点一冊にすれば10年はもつようになる、と想定している。 Q;日比谷の今後の見通しは? A;児童書ははずす。座席を入れる。一般貸出を続ける。それ以外は来年度以降の答申となる。その後の多摩図書館の機能は現在検討中。日比谷の機能についても検討中。 Q;都民への周知はどうなっているか? A;これから都民にも、市町村の館長にも話す。 Q;そんな財政が厳しいというのに外国語資料を集められるのか? Q;個々の施策の説明だけで、その玉突きだけで、全体像がどうなるかよくわからない。児童書を移した後の日比谷はどうなるか、児童書を入れた後の多摩がどうなるか?図書館長に結論を周知すればよいのか、過程を関係者と作り上げてほしかった。「お金がないから都立は縮小していくんだ」とだけ見られますよ。 Q;日本の図書館界をリードしてきた東京都が。これは、全国の図書館に与える影響は大だ。 Q;それぞれのコミュニティにあった県立でよいのだから、もっと自信をもって提案してほしい。 Q;個別には良い施策かもしれないが、財政厳しい折、ただ縮小するんだ、というふうに誤解をまねく。多摩地区の市町村を回ったが、都立多摩への信頼は非常に厚い。 A;都立多摩をつぶすというのではない。多摩地区の人々には少し不便になるかも知れないが都立中央で責任を持つ。国会図書館でさえ1冊しか持たないのになぜ都立図書館は2冊持つのか、ということが東京都の内部では厳しく指摘されている。日比谷の休館がちょうど今年度なので、それが再開するとき児童サービスをやっていて、またしばらくしたら都立多摩に移す、というのでは不信をまねくので、児童書の移管を先行させたのだ。 Q;ビジネス支援図書館に東京都がのりだすと最近、日経新聞に出ていたがどうなのか。 A;あれは石原都政の目玉で産業経済局が考えたこと。 Q;じゃ都立図書館では何も構想はないのか? Q;日比谷こそ「ビジネス支援」とか「レファレンス中心」としてきちっと都立図書館の内側から構想を持つべきでないか。そうでないと児童書を移す意味がない。 Q;日比谷の一般貸出は反対。ビジネス支援、レファレンスライブラリとして素晴らしいロケーションでは? A;あれは都立図書館の話ではない。 Q;昨年の5月以来我々のやっていた「提言」は何だったのか。我々の「提言」と「あり検」の議論と非常にタイミング悪かったですよ。今年度に「提言」がまとまりかけたら、「あり検」が出てきて。 A;この12月に「あり検」の最終報告をするので、今日指摘されたことをいかします。(都立中央図書館長) 以上 館側からの一枚の資料配付もない中で、1時間以上が「あり検」の内容をめぐって協議会委員と図書館側のやりとりに費やされたのである。同時に傍聴していた3人は日比谷の児童サービスを守るために以前から運動していた文庫、子どもの読書運動の方々であった。終了後、自己紹介し、少し情報交換をし再会を約束して別れた。 |
【記録】東京都立図書館協議会 第20期第7回定例会(10月19日)傍聴記