【記録】東京都市町村立図書館長協議会から提出された「件名 第二次都立図書館あり方検討委員会報告に関する意見」

①東京都市町村立図書館長協議会  会長 小池 博                     
②〒188-0012 西東京市南町5-6-11 西東京市中央図書館内
             事務局 〒191-0053 日野市豊田2-49 日野市立中央図書館内 
③0424-65-0823(西東京市中央図書館)
             事務局 042-581-7610(日野市立中央図書館)
④意見 第二次都立図書館あり方検討委員会報告に関する意見

東京都市町村立図書館長協議会会長 
小池 博

 「都立図書館改革の基本的方向」について、東京都市町村立図書館長協議会として意見を提出するものです。

 はじめに、都立図書館と区市町村立図書館の一体性及び役割分担について、意見を述べておきたい。
 「都立図書館改革の基本的方向」(以下「基本的方向」と記す)の9ページ「(4)  顧客満足度の向上」では、「都立図書館はサービス施設であることを強く認識し、利用者である都民を顧客として捉え、その図書館利用に係る満足の最大化を目指すこととする。」と記述している。また、21ページ「(2) 中央図書館における情報サービス体制の効率化」では、「来館者、非来館者を問わず、利用者の立場に立った迅速かつ丁寧なサービスの提供について常に工夫、改善に努める。」と記述している。以上に引用した『利用者』とは、すべての都民を意味し、その場合に来館、非来館を問わないのは当然のことである。
資料・情報を求める都民(来館者、非来館者を問わない)に対し、迅速なサービスを提供するために、都立図書館と区市町村立図書館は連動したネットワークを形成しているのである。そもそも、一線図書館、二線図書館と呼称してきた本意はそこにあったはずである。
 たとえば、レファレンスサービスであるが、区市町村立図書館が利用者から受けるレフアレンスは、それぞれの図書館の力量は異なるものの、それぞれの力量に応じて回答の努力がなされ、回答できない高度な内容のものは都立図書館に応援を要請することになる。これを協力レファレンスと呼ぶのではなく、区市町村立図書館と都立図書館が一つの図書館ネットワークシステムとして機能し、それによって「来館者、非来館者を問わず、利用者の立場に立った迅速かつ丁寧なサービスの提供」を果たしたと考えるべきではないか。都民の資料・情報要求に応える東京都の図書館システムをこのように考えるべきではないか。
 あるいはまた、協力貸出についてはどうか。区市町村立図書館を訪れる利用者は、都立図書館の利用者でもあるのだ。一線図書館の区市町村立図書館で提供が適わない資料を、都立図書館から借り受けて利用者に提供するということは、言い換えれば、区市町村立図書館の窓口を通じて都立図書館が利用者である都民に資料提供したことにすぎない。このことをわざわざ「専門書等の協力貸出を行う」などと釘を刺すような記述をするのではなく、「連動」すなわち、図書館は一体となって十全なサービスを提供するのだということにあらためて思いを至すべきではあるまいか。
 それでは具体的にページを追って、意見を申し述べることにする。

1. 専門書等の協力貸出しについて
7ページに、「今後都立図書館は、・・・・区市町村立図書館に対し、専門書等の協力貸出を行う・・・」とあるが、区市町村立図書館は、書庫の規模等からも長期にわたる資料保存は現実問題として困難である。そのような中で、協力貸出に制限とも受取れる「専門書」の貸出という表現があるのは、上にも述べたように、支援及び連携・協力の観点から疑問とするところである。

2. 蔵書の充実について
「基本的方向」の16ページでは、
「都立図書館では、・・・各分野の核となる資料を・・・収集し、蔵書の整備を図っている。」と述べているが、先の「専門書等の協力貸出を行う」(7ページ)という部分と重ね合わせて読んでみると、都立図書館の今後の蔵書の多様性について疑問を覚えるところである。「基本的方向」6ページでも述べているように、都立図書館の蔵書は「・・・広範かつ豊富な資料・情報を収集整理し、それに基づき、多様な課題に直面する都民(個人・団体)に対し、課題解決に必要な情報を的確に提供する・・・」との観点から整備を進める必要があり、また「・・・都立図書館は、広域的自治体の図書館として広範囲かつ豊富な蔵書を整備し、・・・きめ細かいレファレンスサービスを提供し、・・・」(7ページ)とあるように、核となる資料はもちろん、広く蔵書の充実が必要であることを明確にすべきである。

3. 収蔵対策について
17ページ の「収蔵対策」では、
「・・・資料の保存年限のあり方など、今後の資料保存の考え方について改めて検討すべきである。・・・」とあるが、保存年限のあり方の前に、資料保存の手立てを検討すべきではないか。それは、「基本的方向」自身が9ページで
「・・・印刷資料は、・・・内容の信頼性が高く、また寿命が長いという特徴がある。・・・これまでの研究の蓄積を利用したり、過去の経緯や背景を調べたりするために、印刷資料は不可欠である。このため、知識のストックとして今後も重要である・・・」と述べているように、まず長期保存の手立てを検討すべきと考える。たとへば、日比谷図書館の地元区への移管の前に日比谷図書館を含めた現有の都立図書館の書庫を活用できないか、また、区市町村立図書館と共同で資料保存ができないかなど、長期の資料保存を、都立図書館の「広域行政に求められる図書館サービス」(1ページ)の一つとして再確認すべきと考える。
20ページに「都立図書館と区市町村立図書館間における収集保存の分担について、協議の場を設け、検討する」とあるように、東京都市町村立図書館長協議会で検討を進めている資料の共同保存プロジェクトへの参加を提唱するものである。

4. 日比谷図書館の地元区への移管について
22ページに
「・・・日比谷図書館を地元区に移管することを検討すべきである。・・・」とあるが、先にのべた書庫の活用ということの他に、次の点に充分配慮していただきたい。
一つは日比谷図書館だけが所蔵している資料が多数あり、これらは都立図書館に引き上げて公開すること。もう一つは、フィルムライブラリーであるが、都民が等しく利用可能な環境に配置されるよう考慮されたい。

5. 業務委託の推進について
 22ページには、「業務委託の推進」の中で
「コスト削減のため、・・・民間への業務委託を一層推進する。」
とある。確かに今日の社会状況の中で、コスト意識を無視した図書館運営はあり得ない。そこには、地方自治体の一組織としての行財政運営方針に沿った経営努力が求められるのはやむを得ないところであり、都立図書館が「Ⅰ 都立図書館の今後のあり方」で示した具体的取組のいくつかは、図書館の存立意義を積極的にアピールしていこうとする姿勢として評価できるところである。ただその場合でも、業務委託には図書館の空洞化の危険が伴うことに充分配慮すべきで、とくに広域的・総合的な住民サービスと区市町村立図書館への支援を目指す都立図書館として、留意すべきところと考える。

6. 利用者による費用負担について
 22ページの「利用者による費用負担」では、
「・・・図書館資料ではない民間の有料データベースを活用して行う情報サービス・・・については、・・・利用者に一定の費用負担を求めることを検討する。」とあるが、電子的情報が印刷資料と共に不可欠になりつつある中で、有料の電子的データは図書館資料ではないから一定の費用負担をとなれば、図書館の実質的有料化ということになりかねない。図書館法成立の経緯を踏まえ、都立図書館として、大局的な視点と長期的視野に立った、賢明な判断を求めたい。

7. 「第二次都立図書館あり方検討委員会」の運営と「意見」の取扱について
 今回の報告を作成するにあたり、都立図書館と一体となって都民へのサービスを行っている区市町村立図書館が、その作成過程に参加できなかったことは残念であり、直接利用者の声を聴く立場にある第一線図書館として、遺憾とするところである。今後、改善を図られるよう要望するものである。
また「基本的方向」への意見とそれに対する回答は、何らかの方法で公開していただくよう要望する。

【記録】東京都市町村立図書館長協議会から提出された「件名 第二次都立図書館あり方検討委員会報告に関する意見」

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