【記録】この間の取り組み(整理)と今後について

2001年10月10日
斎藤 誠一
 
1 現状の確認
(1)財政状況の悪化
(2)有限な資料保存能力
 
3 都立多摩図書館のサービススタンスの確認
(1)来館者中心の図書館から市町村立図書館のバックアップ機関として
   →より進化した都道府県立図書館の姿
   →雑誌の貸し出しでの都立中央との違い
   →多摩の市町村立図書館(多摩地域の都民)はよいサービスを受けてきた 
(2)複本購入を実施してきたことの意味
   →市町村にない資料が1週間で手に入る“時間”の意味は大きい
   →23区の図書館及び来館者と1部を取り合わないですむこと
 
3 多摩地区の市町村立図書館にとっての都立図書館の存在意義
(1)もともと、多摩地域の図書館は運営規模も小さく、保存機能も少ないことから、これをバックアップする都立図書館をあてにする度合いは区部に比べて高かった。
(2)区部で以前から行われている近隣ブロックとの雑誌等の分担収集や分担保存のようなことも、もともと収集タイトルが平均的に少なく、バリエーションに乏しかった多摩地域の図書館では現実的ではなく、都立多摩図書館の協力貸し出しに負うところが大きかった。
(3)都立図書館が細長い東京都の東に位置し、多摩の住民が直接行くには遠すぎた。このため、多摩地域に都立中央図書館に相当する図書館が必要であり、都立多摩はその役割を充分に果たしてきた。
→これらの理由により、協力貸し出し、協力レファレンスを行う都立多摩図書館の存在は大きく、実際に、この14年間の利用は活発であり、多摩地域の図書館にとって、ひいては多摩地域の都民にとって欠かせない存在に成長している。情報化社会を迎え、図書館利用に住民も多くなるに従い、ますますその必要性は高まっている。
→①多摩に地域分担的機能を持つ都立図書館は必要だった。
→②多摩に都立図書館としての複本購入は必要だった。
→③多摩に図書、雑誌、レファレンスブックを横断的に使い、協力レファレンスをする都立図書館は必要だった。
 
4 以上のことから見えてくるもの(議論のたたき台として)
(1)上記の①②③は合理的な対案がない限り今後も必要である。
(2)都の財政事情の問題はあるが、都立多摩図書館の縮小、機能変更(デポジット化)を中心とした今回の提案は、多摩地域の図書館及び住民を直撃する。もともと三多摩格差があり、そのバックアップを果たしてきた都立多摩図書館の縮小、機能変更は、都の図書館行政における三多摩格差の推進であり、多摩地域の切り捨てに繋がる。
(3)このまま手をこまねいていて、都が決定し、来年度から実施ということになれば、上記の都立多摩図書館の存在意義は無に帰することになり、そのしわ寄せは住民に跳ね返ることになる。
(4)都立多摩図書館が来館者への配慮から一歩前進して、協力貸し出しを優先してきたサービス体制-市町村の図書館が整理を待っている資料については“急行整理”も独自にやり、レファレンスブックも、新聞や年鑑類も協力貸し出しをしてくれた職場集団の伝統も解体・風化してしまう。また市町村立図書館の整備ともなう都立図書館の市町村のバックアップ機能はより進化したものであり、その先進的なスタイルを後退させることになる。
(5)都立図書館の改革について反対するものではないが、区市町村立図書館の利用実態を充分に考慮した対応をとるべきであり、情報の開示と都民及び区市町村立図書館の意見を取り入れるなかで改革案が決定されるべきである。
(6)資料の保存能力が有限であることは、都立図書館に限らず区市町村立図書館でも同様の問題を抱えている。つまり、この問題は都立図書館だけの問題ではなく、東京都全体の図書館の問題である。この問題を解決させるための基礎となる情報の共有化が始まったばかりであり、未だ完成をみていない。そのような今、性急な都立図書館の1点保存体制は、将来的なリスクを負うものである。情報の共有化の基礎ができる段階であり、これを最優先で推し進め、同時に都立と区市町村立図書館がともにデポジット・ライブラリーの土台を作り上げることが必要である。
(7)安易な機能分担や資料分担を考えるのではなく、都立図書館としてのサービスについてはっきりした方向性を打ち出すべきである。特に日比谷図書館との関係における児童サービスの方向性や、行政・郷土資料のあり方など区市町村立図書館との意見交換を行いながら決定すべきである。
 
5 今後に向けて
(1)都立多摩図書館の問題は、都民全体の問題であり、都民とともにこの問題を考える必要がある。三多摩格差ということが叫ばれて久しいが、未だに三多摩格差は存在している。これを埋める努力をしてきた都立図書館の職員の思いを無にすることはできない。より都民のものとなる都立図書館のあり方を都民、区市町村立図書館員、そして都立図書館職員を含めて考えていく必要がある。その第一歩として、「都立多摩図書館のこれからを考える集い」を11月26日に開催したい。
(2)今回の都立図書館の提案は、未だに不透明な状況である。民主的なやり方としては、具体的な内容をすべて開示し、主権者である都民がはっきりとわかる状況をまず示すのが筋道であろう。多摩の図書館長協議会の動向も見据えながら早急に提案内容が公開されるよう求めていく。
(3)今回集まった職員を中心に今後の動向を注視し、サービスの後退を招く提案については撤回を求め、看護も都の職員とともにサービスの充実を求めた運動を展開する。

【記録】この間の取り組み(整理)と今後について

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